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Victor QL-Y7 修理記録1

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 ・1981年、たしか7月初め、大阪日本橋の電気街で購入したレコードプレーヤー。
 ・以来ずっと使い続けている大切なオーディオ機器の一台です。
 ・2016年の年末休暇、久しぶりにレコードを聴こうとしたところ、、
 ・何と、、ターンテーブルが回らない、アームも動かない!
 ・購入から35年、いよいよ寿命かと思いつつ、原因と対策を探ってみました。

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■製品情報------------------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 VICTOR QL-Y7 ¥96,000(1981年頃)
 ・Vinyl engine JVC QL-Y7
 ・Victor QL-Y7/Y5 製品カタログ 昭和54年(1979年)11月版
 ・Victor QL-Y7 取扱説明書

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■故障状況------------------------------------------------------------

 ・前回 QL-Y7 の電源を入れたのは、、たぶん1年位前だったか??
 ・最近はもっぱらお手軽な Technics SL-5を使っていたので拗ねちゃった?
 ・症状は以下の通り。QL-Y7 の電源を入れると、
  【不具合1】 回転数を示す「45」「33」のインジケーターが点灯しない。
  【不具合2】 「START」ボタンを押してもターンテーブルが回転しない。
  【不具合3】 アームの「UP/DOWN」ボタンを押してもアームが動かない。
  【不具合4】 数分経つとターンテーブルがゆっくり回転を始める。
  【不具合5】 本来はすぐに点灯するはずの「Quatz Lock」ランプが弱々しく明滅する。
  【不具合6】 回り始めたターンテーブル、今度は「STOP」ボタンを押しても止まらない。
  【不具合7】 回転がどんどんスピードアップし、ついには高速回転状態に。
 ・これは参った、、、電源オフ、、
 ・ここまで一気に悪化した原因は何でしょう?
 ・すべての動作がおかしいので電源回路の故障か?

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■内部確認------------------------------------------------------------

 ・「いつか本格的にメンテナンスしよう」と思いつつ、
 ・でも結局ずっと放置状態でした。きっとその報いですね、、反省、、
 ・まずカートリッジを取り外してアームをスタンドに固定。
 ・ゴムマットとターンテーブルを取り外す。
 ・アクリルカバーを閉めて養生テープで本体と固定。
 ・注意深く本体を裏返す。
 ・そういえば昔、音声・電源コードを交換しようと思って裏返したことがありました。
 ・でも内部を見て面倒になり、結局交換しなかったことを思い出す。

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 ・それにしてもインシュレーターのゴム部分の劣化がひどい。
 ・多数のネジを外して裏板を取り外すと、基板のハンダ面が見える状態。
 ・シルク印刷を見るとICや半固定抵抗、テストポイント(TP)がたくさん並んでいる。
 ・電子制御アーム関係の回路があるためか、かなり複雑な構成。
 ・これは回路図やサービスマニュアルが無いと迂闊に手を付けられない。
 ・電源部と思われる電解コンデンサー(1000uF/35V×3個)が重傷。

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■修理記録1:電解コンデンサー総交換----------------------------------

 ・とりあえず足が腐食している電源部電解コンデンサーを交換。
 ・ついでにその他の電解コンデンサーを全数交換。
【電源基板】
 ・部品番号不明:1000uF/35V×3個
【右側※基板】※正面を前にして裏返した状態で
 ・C902,C905:1uF/50V(BP)
 ・C904,C911,C914:10uF/25V
 ・C913:4.7uF/50V
 ・C920:33uF/50V(BP)
【左側※基板】※正面を前にして裏返した状態で
 ・C814,C819,C820,C828,C829:47uF/16V
 ・C815,C816:33uF/25V(BP)
 ・C823,C824:47uF/35V
 ・C825:1000uF/35V
 ・C802:10uF/50V
 ・C818:4.7uF/50V
 ・C817:0.47uF/50V

 ・特にC823 47uF/35V は腐食によってマイナス足が外れていました。
 ・基板とボディのスペースが限られるため電解コンデンサの高さはH=26mmまで

■動作確認:アーム動作のトラブル発生------------------------------------

 ・電解コンデンサーを交換した状態で基板を元に戻して試運転開始。
 ・電源オン、、回転数「33」クッキリ表示。もちろん「45」も同様にOK。
 ・「START」ボタンを押すとスムーズに回転開始、直後に「Quartz Lock」ランプ点灯。
 ・「STOP」ボタンを押したときのブレーキの効き具合が抜群に良くなった印象。
 ・アームの「UP/DOWN」ボタンを押すとアームが上昇開始。
 ・ここまでの動作は完璧、、ところが、、

 ・アーム左移動ボタンを押すとアーム軸部から「ジジ、、」と異音が発生して動かない。
 ・「UP/DOWN」ボタン操作や「<」「>」ボタンを押しているうちに異音が消えて動き出す。
 ・「UP/DOWN」ボタンを押してアームが降下。
 ・とりあえずステレオ音声でレコードが再生できました、、やれやれ、、
 ・レコード再生終了後、アームは自動的にスタンドに戻る。
 ・続いてレコードB面をセットしてもう一度動作確認。
 ・アーム左移動ボタンを押すとアーム軸部から「ジジ、、」と異音が発生して動かない。
 ・「UP/DOWN」動作と「REJECT」動作は問題なし。
 ・これは電子制御アームの仕組みを勉強しないと手が付けられない。

■QL-Y5F:アーム動作研究-----------------------------------------------

 ・QL-Y7の資料は見つかりませんが、代わりにQL-Y5Fのサービスマニュアルを入手。
 ・電子制御アームの基本構造はほぼ同じなので参考になるはず。
 ・QL-Y5Fの資料にアーム動作不良時のトラブルシューティングがありました。
 ・問題発生時のチェック箇所です。

Qly5f_sche

【水平方向制御に問題がある場合】
 ・右方向:IC805(NJM4558D)→X804(2SB605)
 ・左方向:IC805(NJM4558D)→X803(2SD571)
【上下方向制御に問題がある場合】
 ・IC804(NJM4558D)→X801(2SD325),X802(2SB511)

■QL-Y7:アーム動作研究-----------------------------------------------

 ・QL-Y5Fのアーム制御該当箇所をQL-Y7の基板で配線を追いながら探す。
 ・アームに繋がる部分にQL-Y5Fと全く同じ回路がありました。
 ・QL-Y5Fの部品番号を読み替えると以下のようになります。

【水平方向制御に問題がある場合】
 ・右方向:IC804(NJM4558D)→X806(2SB605)
 ・左方向:IC804(NJM4558D)→X805(2SD571)
【上下方向制御に問題がある場合】
 ・IC803(NJM4558D)→X803(2SD325),X804(2SB511)

 ・4558オペアンプの故障はチューナー修理でもよくある事例です。
 ・そこでまず4558交換。IC803,IC804(4558D) → 45584DD 交換。※ICソケット使用
 ・交換後に動作確認したところ、
 ・アーム軸部の異音が解消し左右方向のアーム動作が正常になりました!
 ・アーム動作の不調原因はIC804(4558D)だったようです。
 ・ついでに同じ4558Dを使っているIC807も交換しておきました。

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■針圧調整------------------------------------------------------------

 ・とりあえずレコードが聴ける状態まで復旧できました。
 ・ただここで針圧設定に疑問が湧いてきました。
 ・QL-Y7の針圧調整は電子制御式です。
 ・電源オフ時にアームの水平バランスを取る。
 ・トラッキングフォース調整つまみの目盛りを希望針圧値に合わせる。
 ・疑問とは、「調整つまみの目盛りは本当に正しい針圧を示しているのか?」ということ。
 ・基板には調整用VRやTPがたくさんありました。
 ・部品交換によって本来の設定値が崩れた可能性高いです。

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■デジタル針圧計------------------------------------------------------

 ・マニュアル機と違ってウェイト自体に針圧を示す数値の印字がありません。
 ・実際にどれくらいの針圧がかかっているのか?
 ・針圧を測定する器具はないものかと探したところ、アマゾンで発見。
 ・昔は数万円する高価なマニア向け器具だったと思いますが、今は安い物があるんですね。

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【商品名、型番】
 ・[Signstek]ブルー背景色電子針圧測定器
 ・メーカー名も型番もよく分からない、かなり怪しげな商品です。
 ・同じような商品が複数出品されていてそれぞれ価格が微妙に異なる。
 ・添付の取扱説明書は英語と中国語のみ。
【使い方】
 ・中央「○」ボタン=電源
 ・左側「M」ボタン=「MODE」測定単位切換(g/oz/ozt/TL/ct)
 ・右側「T」ボタン=「TARE」ゼロ点調整※
   ※何も載せない状態で0.00点がズレている場合に押すとゼロ点調整できる
 ・測定部中央の黒点付近に針を慎重に降ろす。
 ・測定結果が表示される。
【キャリブレーション】
 ・電源オン → 「0.00」表示
 ・電源ボタンを押し続ける → 「0」が表示されたらボタンを離す
 ・「5.00」が点滅表示される → 付属の5gウェイト載せる
 ・「5.00」の点滅が終わるとキャリブレーション終了
【1円硬貨で検証】
 ・1円硬貨1枚 → 1.01g
 ・1円硬貨2枚 → 2.00g
 ・1円硬貨3枚 → 3.00g
 ・1円硬貨4枚 → 4.00g
 ・1円硬貨5枚 → 5.00g
  ※写真では小数点が隠れていますが「500」→「5.00」、「000」→「0.00」です。

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【測定結果】
 ・針圧計に針を降ろしトラッキングフォース調整つまみを回すと針圧が増減します。
 ・実際の針圧がリアルに確認できるなんて、、ちょっと感動。
 ・SURE M44G 希望針圧1.5g → 目盛り1.5 に設定 → 実針圧1.8g
 ・DENON DL103 希望針圧2.5g → 目盛り2.5 に設定 → 実針圧2.9g

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 ・針圧はこれでOK。でも、
 ・Qダンプやアンチスケーティングつまみも同じ値に設定することになっています。
 ・やはりTPの意味やVRの調整法を理解して適切に調整する必要があります。

■QL-Y7、QL-Y5F、QL-Y55F 比較対照表作成--------------------------------

 ・QL-Y7のサービスマニュアルや回路図を探しましたが、残念ながら見つかりません。
 ・一方でQL-Y5F、QL-Y55F、QL-Y66Fの海外版サービスマニュアルを入手しました。
 ・サービスマニュアルには回路図だけでなく詳細な調整方法の記述もあります。
 ・そこで、QL-Y7実機、QL-Y5F回路図、QL-Y55F回路図を詳細に比較して対照表作成。
 ・電子制御アームの回路構成は3機種ともほぼ同じでした。
 ・ICの使い方を見ると QL-Y7 → QL-Y5F → QL-Y55F の順に進化した様子が分かります。
 ・この対照表に基づいてQL-Y55Fのアーム調整法をQL-Y7用に読み替えてみました。
 ・これが正しい方法かどうかは分かりませんが、とりあえず以下の調整を行ってみました。

Qly7__2

■(仮)調整記録 (参考程度です)---------------------------------------

【Horizontal first stage offset adjustment】
 ・トーンアームをアームレストに固定する
 ・Tracking Force → ゼロ
 ・Q Dump → ゼロ
 ・Anti Skating → ゼロ
 ・UP/DOWNボタンを押してアーム上昇状態にする(アームレストに固定しているので実際には上昇しない)
 ・TP7-TP10 間に電圧計セット → VR803(=VR809)調整 → 電圧0V±5mV
 ・VR803(=VR809)はターンテーブル下にある調整つまみ

【Vertical offset adjustment】
 ・トーンアームをアームレストに固定する
 ・Tracking Force → ゼロ
 ・Q Dump → 最大
 ・Anti Skating → ゼロ
 ・TP6-TP9 間に電圧計セット → VR801調整 → 電圧0V±5mV

【Anti-skating adjustment】
 ・Anti-skating → 楕円針「3」にセット
 ・Tracking Force → ゼロ
 ・Q Dump → ゼロ
 ・アームが下りた状態
 ・TP7-TP10 間に電圧計セット → VR804調整 → 電圧1.46V±0.1V ●要再検討

【Tracking force adjustment】
 ・Tracking force → 目盛り1.5位置にセット
 ・Q Dump → ゼロ
 ・Anti Skating → ゼロ
 ・針圧計に針を降ろす → VR805調整 → 針圧計1.5g

■インシュレーター補修------------------------------------------------

 ・ひび割れだらけのインシュレーターを放ってはおけません。
 ・ホームセンターであれこれ見た中で「黒ゴム接着剤」を買ってきました。
 ・ゴム製の長靴、車のゴム製モール、ウェットスーツなどの補修が例示されています。
 ・硬化した後も弾力があるとのことなのでちょうど良いかも。
 ・ひび割れ部にチューブの口を押し当て、ギュッと絞り出す。
 ・ヒビの奥深くまで浸み込ませる感じです。
 ・さらにヘラを使って強引に押し込む。
 ・完全硬化まで24時間。出来栄えはなかなか良い感じでした。

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■試聴---------------------------------------------------------

 ・レコード三昧ではなく、予定外のプレーヤー修理三昧な年末休暇でした。
 ・不明な点が多々残っていますが、今回はとりあえずここまでで。
 ・QL-Y7サービスマニュアルが入手できたら作業再開予定。
 ・でも修理作業を通して勉強になることが多く充実した休暇でした。
 ・回路図を見ながら思考回路を働かせること、細かい部品交換で指先を動かすこと。
 ・一連の作業は頭の体操(ボケ予防)に最適ですね。
 ・あと、良質な音楽に浸る幸せな時間が何より大切です。

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