・2016年11月、Marantz ST-8mkII(マークツー)が届きました。
・オシロスコープを装備したチューナーは初体験です。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 Marantz ST-8 \135,000(1979年頃)
・オーディオの足跡 Marantz ST-8mkII ¥135,000(1980年頃)
・Hifi Engine Matrantz ST-8 Quartz Stereo Tuner (1980-82) サービスマニュアルあり
・Marantz ST-8mkII 取扱説明書※依頼者様からご提供いただきました。
・ST-8 と ST-8mkIIの違いは何でしょう?
・外観に相違点なし。mkIIではウッドケースが標準装備になったとか?
・よく見るとAM受信周波数帯に違いがありました。
・ST-8 535~1605kHz
・ST-8mkII 531~1602kHz
・そういえば1978年(昭和53年)11月、AM放送局の送信周波数が一斉変更さました。
・AM部分のの仕様変更だったとか?
■動作確認------------------------------------------------------------
・シャンパンゴールドに輝く美しいフロントパネル。とても綺麗です。
・ボディは多少の擦り傷があるものの、状態は良いです。
・本来はウッドケースに収まっていたのでしょうか、底面に足がありません。
・75Ω端子にアンテナを接続して電源オン。
・周波数の目盛りと数字だけが青く浮かび上がり、指針先端は赤く光ります。
・ゴールドフェイスにマッチして何とも言えず高級感が漂いますね。
・さて、一般的なチューナーにあるTメーターやSメーターがありません。
・本機の特徴であるオシロスコープがその役割を果たすはずですが何も映りません?
・オシロスコープ下にある押しボタンで機能を選択する必要がありました。
・試行錯誤を繰り返してオシロスコープの使い方がだんだん分かってきました。
・FM受信時は垂直方向で電波強度、水平方向で同調状態を同時に表示する。
・AM受信時は垂直方向のみで電波強度を表示する。
・マランツ機特有の円盤状の選局つまみ「ジャイロチューニング」が特徴的。
・タッチセンサー内蔵でジャイロに指を触れるとロック解除。
・指を離すとクォーツロック回路が周波数をロックする。
・IFバンド切替、MUTING切替、REC CALトーン機能など動作OK。
・AM放送は背面バーアンテナでクリアに受信OK。
・大きな問題点は無さそうな印象です。
■内部確認------------------------------------------------------------
・ボディと底板を外して内部確認。ST-8回路図と見比べながら細部を調査。
・FM5連、AM3連バリコン搭載のフロントエンド。
・Wide系/Narrow系IF+レシオ検波
・制御系IF+レシオ検波
・HA11223:PLL-MPX
・LA1240:AMチューナー
■調整記録------------------------------------------------------------
●オシロスコープ部の調整 ※高電圧・感電注意!
・SCOPE DISPLAY=EXT.
・VERT=中央位置
・HORIZ=中央位置
・EXT LEVEL=最小位置
【中点調整】
・オシロスコープ基板 R925(H.CENTER)調整 → オシロスコープ上の輝点を中央に
・オシロスコープ基板 R926(V.CENTER)調整 → オシロスコープ上の輝点を中央に
【GAIN調整】
・REC LEVEL=ON
・SCOPE DISPLAY=AUDIO
・オシロスコープ基板 R927(H.GAIN)調整 → H振幅=3
・オシロスコープ基板 R928(V.GAIN)調整 → V振幅=3 → ※輝線の傾き=45度
【TUNING BIAS調整】
・REC LEVEL=OFF
・SCOPE DISPLAY=EXT.とTUNINGを同時に押す
・オシロスコープ基板 R931(TUNING BIAS)調整 → オシロスコープの輝点を一番下に
●FM部の調整
・SCOPE DISPLAY=TUNING
・VERT=中央位置
・HORIZ=中央位置
・IF-WIDE=EXT.
・QUARTZ LOCK=OFF
・MPX NOISE FILTER=OFF
・MUTING LEVEL=OFF
【制御系IF同調点調整】
・IF基板 J220~J218間に電圧計セット(Tメーター)
・IF基板J201にSSG10.7MHz注入 → IF基板L213調整 → 電圧ゼロ
【FM OSC調整】
・IF基板 J220~J218間に電圧計セット(Tメーター)
・SSG 76.0MHz 1kHz → フロントエンドL106調整 → 電圧ゼロ
・SSG 90.0MHz 1kHz → フロントエンドTC105調整 → 電圧ゼロ
※L106がボンドで固められていたため、83MHz一点のみで調整
※SSG 83.0MHz 1kHz → フロントエンドTC105調整 → 電圧ゼロ
【FM RF調整】
・IF基板 J220~J218間に電圧計セット(Tメーター)
・SSG 76.0MHz 1kHz → 電圧ゼロ確認
・IF基板 J212電圧計セット(Sメーター)
・SSG 76.0MHz 1kHz → フロントエンドL101~104調整 → 電圧最大
・SSG 90.0MHz 1kHz → 電圧ゼロ確認
・SSG 90.0MHz 1kHz → フロントエンドTC101~104調整 → 電圧最大
【FM IFT調整】
・IF基板 J220~J218間に電圧計セット(Tメーター)
・SSG 83.0MHz 1kHz → 電圧ゼロ確認
・IF基板 J212電圧計セット(Sメーター)
・SSG 83.0MHz 1kHz → フロントエンドL105調整 → 電圧最大
【NARROW系IF調整】
・IF-WIDE=OFF
・IF基板 J220~J218間に電圧計セット(Tメーター)
・SSG 83.0MHz 1kHz → 電圧ゼロ確認
・IF基板 J212電圧計セット(Sメーター)
・SSG 83.0MHz 1kHz → IF基板L202調整 → 電圧最大
【レシオ検波調整】
・IF-WIDE=ON
・IF基板 J216~GND間に電圧計セット(Tメーター)
・音声出力をWaveSpectra観察
・SSG 83.0MHz 1kHz → IF基板L206調整 → 電圧ゼロ
・SSG 83.0MHz 1kHz → IF基板L205調整 → 高調波歪最小
【VCOフリーラン調整】
・TP VCO(R314)に周波数カウンタ接続
・SSG83.0MHz → R313調整 → 76kHz±200Hz
【パイロットキャンセル調整】
・音声出力をWaveSpectraで観察
・SSG83.0MHz ST変調 → R302調整 → 19kHz成分最小
【WIDE系セパレーション調整】
・IF BAND=WIDE
・SSG83.0MHz ST変調 → フロントエンドL105調整 → 高調波歪最小
・SSG83.0MHz ST変調 → MPX基板R369調整 → Lch漏れ最小
・SSG83.0MHz ST変調 → MPX基板R366調整 → Rch漏れ最小
【NARROW系セパレーション調整】
・IF BAND=NARROW
・SSG83.0MHz ST変調 → IF基板C294調整 → 高調波歪最小
・SSG83.0MHz ST変調 → MPX基板R368調整 → Lch漏れ最小
・SSG83.0MHz ST変調 → MPX基板R367調整 → Rch漏れ最小
【REC LEVEL調整】
・IF BAND=WIDE
・SSG83.0MHz ST変調 400Hz → オーディオ出力レベル記録
・REC LEVEL=ON → AF基板RT37調整 → -6dBレベルに
【MUTING調整】
・MUTINGつまみ設定=MIN
・SSG83.0MHz 18dB → IF基板RB10調整 → MUTING解除位置
・MUTINGつまみ設定=MAX
・SSG83.0MHz 34dB → IF基板RB47調整 → MUTING解除位置
・SSG83.0MHz 34dB → MPX基板R349調整 → MUTING同調点検出レベル
※MPX基板Q348-C電圧 → 同調時3V前後、離調時0V
【オシロスコープ:Sメーター調整】
・SCOPE DISPLAY=TUNING
・SSG83.0MHz 60dB → IF基板RB11調整 → オシロスコープレベル=3
※オシロスコープ目盛りの最下段を0、最上段を6とする。
【オシロスコープ:MULTIPATH調整】
・SCOPE DISPLAY=MULTIPATH
・SSG83.0MHz 60dB → IF基板RB27調整 → オシロスコープ水平振幅=3
※マルチパス(H)調整
●AM部の調整
【AM OSC調整】
・IF基板J205 電圧計セット(AM Sメーター)
・SSG 600kHz 60dB → IF基板L152調整 → 電圧最大
・SSG1400kHz 60dB → フロントエンドTC152調整 → 電圧最大
【AM RF調整】
・SSG 600kHz 60dB → IF基板L151、バーアンテナ調整 → 電圧最大
・SSG1400kHz 60dB → フロントエンドTC151,153調整 → 電圧最大
【AM IF調整】
・SSG1000kHz 60dB → IF基板L153,154調整 → 電圧最大
【AM Sメーター調整】
・SSG1000kHz 60dB → IF基板R152調整 → オシロスコープSレベル=2.5
■試聴----------------------------------------------------------------
・シャンパンゴールドに青色照明、何とも言えず高級感があります。
・オシロスコープに映し出される輝線は見ていて飽きないです。
・オーディオ全盛期の稀少機種として価値があります。