・2016年9月、PIONEER F-007の故障品が届きました。
・独特の同調方式、またPBLD検波機として貴重な機種です。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオ懐古録 PIONEER F-007 ¥95,000(1978)
・オーディオの足跡 Pioneer F-007 ¥95,000(1979年頃)
・Hifi Engine PIONEER F-28 ※輸出機サービスマニュアルあり
■分布定数形遅延線検波-------------------------------------------------
・この検波方式は PIONEER F-26を入手したときに少し勉強しました。
・パイオニアではこの検波方式を「超広帯域直線検波」とカタログに表記しています。
・F-26以降では「Parallel Balanced Linear Detector:PBLD」と称されます。
【超広帯域直線検波】
・1974年 Pioneer TX-9900 140,000円
・1974年 Pioneer TX-8900 65,000円
・1975年 EXCLUSIVE F-3 250,000円
・1976年 Pioneer TX-8900Ⅱ 65,800円
【Parallel Balanced Linear Detector / PBLD
・1977年 Pioneer F-26 135,000円
・1978年 Pioneer F-007 95,000円
■動作確認------------------------------------------------------------
・フロントパネルはほぼ無傷、ただしプッシュボタンに錆。
・ボディと背面パネには全体にボツボツと金属錆が目立ちます。
・背面端子は可変出力端子以外は酷く錆びています。
・FMアンテナを接続して電源オン。
・周波数窓の照明点灯。インジケータ類点灯
・ただ、FM放送を受信できません。全くの無音。
・マルチパスH端子は局間ノイズのみ。
・REC CAL信号は聞こえます。
■内部確認------------------------------------------------------------
・フロントエンド=5連バリコン+バリキャップOSC
・IF回路 WIDE / NARROW 切替
・M5109PR PBLD検波
・PA3001A クアドラチュア検波(同調点検出、Sメーター駆動)
・PA1001A PLL MPX
・PA1002A AF、MUTING動作
・回路構成や動作原理について ひろくん様のサイトで詳しく解説されています。
・シンセサイザー回路は輸出版回路図と随分異なります。
■修理記録:フロントエンドOSC回路--------------------------------------
・全く受信できない状態です。
・調べてみるとフロントエンドからIF信号が出ていません。
・VT電圧12.5Vで変化しない。OSC回路が発振していない?
・フロントエンド内 Q4 2SC1923 → 2SC1923を新品に交換。
・これでFM放送を受信するようになりました。
・念のためフロントエンド内 Q5,Q6 2SK61 も新品交換。
・これで良さそうです。
■調整記録------------------------------------------------------------
・ひろくん様のサイトとサービスマニュアルを参考に調整してみました。
【シンセサイザー基板】
・シンセサイザー基板から同軸ケーブルを抜く
・TP3 周波数カウンタ接続 → TC調整 → 10.2343MHz
・TP6 オシロスコープ接続 → 2ND,6TH調整 → 61.4MHz波形最大
・シンセサイザー基板に同軸ケーブル接続
・指針を76.1MHzにセット
・TP4 オシロスコープ接続 → LPF調整 → 399.8kHz方形波
【OSC VT電圧調整】
・TP9 電圧計セット
・指針を76.1MHzにセット → L6調整 → 1.07V
・指針を83.2MHzにセット → TC6調整 → 7.89V
【RF調整】
・SSG76.1MHz 30dB無変調 → L1~L5調整 → Sメーター最大
・SSG89.9MHz 30dB無変調 → TC1~TC5調整 → Sメーター最大
【IF調整】
・SSG83.0MHz 30dB無変調 → T1調整 → Sメーター最大
【同調点調整】
・TP28~TP29間 DC電圧計セット
・83MHz受信 → T8調整 → 電圧ゼロ
【IF歪調整】
・IF BAND=WIDE
・83MHz受信 → T1調整 → 高調波歪最小
・IF BAND=NARROW
・83MHz受信 → T2調整 → 高調波歪最小
【IF中心周波数調整】
・IF BAND=WIDE
・83MHz受信 → シンセサイザー基板TC調整 → 高調波歪最小
【PBLD検波調整】
・83MHz受信 → VR1調整 → 高調波歪最小
【コンパレータ調整 DC Null】
・TP23~TP24間 DC電圧計セット
・83MHz受信 → VR5調整 → 電圧ゼロ
【MUTING調整】
・83MHz20dB受信 → VR2調整 → ミューティング作動
【Sメーター調整】
・83MHz100dB受信 → VR3調整 → Sメーター100dBf
【REC LEVEL調整】
・83MHz 1kHz 100%変調 → オーディオ出力レベル記録
・REC LEVEL CHECKオン → VR4調整 → -6dBセット
【VCO調整】
・TP3 周波数カウンタ接続
・83MHz変調オフ → VR1調整 → 76kHz
【パイロットキャンセル調整】
・83MHzステレオ変調 → VR2,T1調整 → 19kHz成分最小
・左右バランス注意
【セパレーション調整】
・IF BAND=WIDE
・83MHzステレオ変調 → VR3調整 → 反対ch漏れ信号最小
・IF BAND=NARROW
・83MHzステレオ変調 → VR4調整 → 反対ch漏れ信号最小
■試聴----------------------------------------------------------------
・周波数ズレ皆無、気持ちよく同調します。
・歪率、セパレーションとも良い数値を示します。
・操作ボタンのサビ、ボディのサビが気になりますが仕方がない無いですね。
・稀少機として大切に残したい機種です。