・2016年1月、Victor FX-711の故障品2台セットが届きました。
・最悪の場合はニコイチで、とも思いましたが幸い2台とも復活しました。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 VICTOR FX-711 ¥49,800(1987年頃)
・オーディオ懐古録 Victor FX-711 ¥49,800
・Hifi Engine JVC FX-1100 サービスマニュアル、回路図あり
・FX-711 取扱説明書 PDF形式
■動作確認------------------------------------------------------------
【1号機】フロントパネルにシールあり
・ひどいヤニ汚れ。ボディには細かい擦り傷多数。
・電源投入OK、表示管点灯、周波数表示OK。
・ところが STEREO/MONOともに全く入感しません。
・電界強度表示は 0dB を示すだけです。
【2号機】フロントパネルにシールなし
・ヤニ汚れは無いものの、ボディには細かい擦り傷多数。
・電源投入OK、表示管点灯。周波数表示OK。
・オート選局で名古屋地区のFM放送局を受信しました。
・アンテナA/B切替、RF切替、IF BAND切替、MUTING、REC CAL音など動作OK。
・STEREOランプ点灯。
・電界強度表示は100dB~120dBと実際より相当高い値を示します。
・手元にあった適当なループアンテナでAM受信確認。
・名古屋地区のAM放送局を受信しました。
・ただ1000kHz以上の放送局の受信感度が悪いようです。
■1号機:修理記録:電源----------------------------------------------
・まずは1号機の電源周りを調査しました。
・電源基板から出ている電圧は正常ですが、メイン基板Q3エミッタ電圧がおかしい。
【メイン基板 電源部】
・Q801エミッタ電圧(+30V):+28.5V
・Q803エミッタ電圧(+12V):+1.5V →R817交換→ +11.8V
・Q805エミッタ電圧(+ 5V):+ 5.1V
・Q808エミッタ電圧(-12V):-12.8V
・周囲を調べてみると Q802(2SC458)の電圧がおかしい。
・Q802を 2SC1815 に交換 → 変化なし
・不具合の原因はヒューズ抵抗 R817 4.7Ω の断線でした。
・R817 を外して見ると黒く焼け焦げた跡があります。
・これを交換したところ、電界強度表示が出現、FM放送を受信できるようになりました。
■1号機:再び動作確認--------------------------------------------------------
・電界強度表示が現れてFM放送を受信できるようになりました。
・ただしモノラル受信だけ可能で、STEREO受信では全く音が出ません。
・モノラル受信=MUTINGオフの状態
・電界強度表示は60dB辺りを示すのに音が出ない、、
・動作を見ているとどうやらMUTINGが効いている感じ?
・同調点検出がズレているため MUTINGが解除できないのか?
■1号機:修理記録:FM同調点------------------------------------------
・まずは過去の事例に倣って一通り受信調整してみました。
・すると、
【FM同調点調整】
・TP103 DC電圧計セット
・83MHz 1kHz 100%変調 70dB → T206調整 → 0V±1.5mV
・この電圧が最小でも100mV前後。0Vに合わせられません。
・どうやら T206内部のコンデンサ容量抜けのようです。
・回路図で確認、R667に並列に22pF温度補償型コンデンサをハンダ面に外付け。
・これでTP103電圧をゼロに設定できました。
・上記調整でFM同調点が決まった途端、STEREO受信できるようになりました。
・やはり同調点ズレのため受信したと判定できず、MUTINGが解除できなかったわけです。
・あとは再調整で直りそうです。
■1号機:調整記録-----------------------------------------------------
・英文サービスマニュアルの調整方法を一部アレンジして調整しました。
・フロントパネルスイッチ設定
・RF MODE=DX
・IF BAND=WIDE
・MUTING=OFF
●FM部
【VT電圧】
・TP101 DC電圧計セット
・受信周波数 76MHz → L151調整 → 7.5V±0.1V
・受信周波数 90MHz → TC105調整 → 22.0V±0.1V
・上記作業を数回繰り返す
【RFトラッキング調整】
・76MHz 1kHz 100%変調 40dB → L103,L104,L105,L106調整 → dB表示最大
・90MHz 1kHz 100%変調 40dB → TC101,TC102,TC103,TC104調整 → dB表示最大
・上記作業を数回繰り返す
【IFT調整】
・83MHz 1kHz 100%変調 40dB → T101調整 → dB表示最大
【PLL検波 VCO調整】
・TP104 周波数カウンタ接続
・受信バンド切替 → AM
・何も受信しない状態 → T208粗調整 → 10.7MHz±0.01MHz
・何も受信しない状態 → T208微調整 → 10.7MHz±0.01MHz
・受信バンド切替 → FMに戻す
【FM dB表示調整】
・83MHz 1kHz 100%変調 70dB → VR602調整 → 表示74dB
・83MHz 1kHz 100%変調 30dB → VR601調整 → 表示24dB
・上記作業を数回繰り返す
【モノラル歪調整:WIDE】
・IF BAND=WIDE
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 1kHz 100%変調 70dB → T204(黒)調整 → モノラル歪最小
【ステレオ歪調整:WIDE】
・IF BAND=WIDE
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 1kHz stereo変調 70dB → T202(黒)調整 → ステレオ歪最小
・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【ステレオ歪調整:NARROW】
・IF BAND=NARROW
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 1kHz stereo変調 70dB → T201(黒)調整 → ステレオ歪最小
・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【FM同調点調整】
・IF BAND=NARROW
・TP103 DC電圧計セット
・83MHz 1kHz 100%変調 70dB → T206調整 → 0V±1.5mV
【MUTINGレベル調整】
・MUTING=ON
・83MHz 1kHz 100%変調 20dB → VR604調整 → MUTING作動確認
【セパレーション調整】
・IF BAND=WIDE
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 1kHz STEREO変調 70dB → VR401調整 → Rch > Lchもれ最小
・83MHz 1kHz STEREO変調 70dB → VR402調整 → Lch > Rchもれ最小
・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【パイロット信号キャンセル調整】
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 1kHz STEREO変調 70dB → VR403調整 → 19kHzもれ最小
・左右chのバランスに注意
【REC CAL調整】
・83MHz 1kHz STEREO変調 70dB → 通常受信で出力レベル記録
・83MHz 1kHz STEREO変調 70dB → VR404調整 → 上記記録-6dBに設定
・TONE 427Hz
●AM部
【VT電圧】
・TP102 DC電圧計セット
・受信周波数 522kHz → L302調整 → 1.8V±0.1V
・受信周波数1629kHz → TC302調整 → 22.0V±0.1V
・上記作業を数回繰り返す
【トラッキング調整】
・ 729kHz(NHK第一)受信 → L301調整 → 感度最大
・1332kHz(東海ラジオ)受信 → TC301調整 → 感度最大
・上記作業を数回繰り返す
【AM dB表示調整】
・999kHz 90dB送信 → VR603調整 → ※AMのdB値は適当です。
■2号機:修理記録 高い周波数のAM局の受信感度が悪い
・TC301,TC302 トリマコンデンサ(20pF)を交換交換しました。
・交換後にAM部の調整をやり直しました。
・たぶん大丈夫だと思います。
■1号機、2号機:修理記録 キャパシタ交換------------------------------
・1号機、2号機とも登録したメモリ内容がすぐに消えてしまいます。
・フロントパネル内側基板にある電気二層コンデンサを交換しました。
・C703 0.047uF/5.5V → 0.1uF/5.5V
・電源プラグを抜いて1週間後もメモリ内容を保持していました。
■追記:タクトスイッチ------------------------------------------------
・フロントパネルのスイッチのうち、反応の鈍いものがいくつかあります。
・パネルを外してみると、タクトスイッチ(6mm角 ボタン高6mm)合計32個ありました。
・本来はタクトスイッチ全数交換がベストですが、ちょっと数が多過ぎて、、、
・何度もON/OFFを繰り返すうちに反応するようになったので、
・今回は交換は見送りました。
■試聴-------------------------------------------------------------
・1号機はちょっと手間がかかりましたがどちらも復活しました。
・両機とも良い性能を取り戻したと思います。