・2015年12月、SANSUI TU-S707X DECADE の修理調整作業を承りました。
・STEREOランプが点灯しない状態だそうです。
・再調整だけで直るかと思ったら、予想外に大手術になりました。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 SANSUI TU-S707X ¥54,800(1984年発売)
・オーディオ懐古録
・Hifi Engine TU-S77X ※回路図あり
■動作確認------------------------------------------------------------
・サイドウッドがありませんがDECADEモデルの特徴である金色モールが光っています。
・電源OK。FMアンテナを接続して動作確認。
・周波数表示の輝度がちょっと暗い。特に「FM」の文字がほとんど見えない。
・受信確認では名古屋地区のFM放送を受信しました。
・周波数ズレはないものの、STEREOランプ点灯しない。聴感上もステレオ感がない。
・その他機能、MUTING動作、IFバンド(Wide/Narrow)切替、CAL TONEなどOK。
・AMは手持ちの適当なループアンテナを接続して確認。
・名古屋地区のAM放送を正常に受信しました。
■内部確認+調整記録--------------------------------------------------
・最近のTU-S707X調整記録に倣って各部再調整しました。
・DECADEモデルでは基準周波数を調整するTC1が省略されています。
・使われている部品が微妙に違いますが基本的にTU-S707Xと同じです。
【VT電圧確認】
・フロントエンド内[VT-GND]に直流電圧計接続
・90MHz時の電圧=実測値8.4V → TC5調整 → 8.4V ※本来23V前後のはず?
・76MHz時の電圧=実測値1.7V
・いきなりVT電圧が低すぎます。
・OSCトリマTC5を回してもVT電圧が全く変化しません。
■修理記録:OSCトリマ交換---------------------------------------------
・別のTU-S707Xから外して保管していたフロントエンドパックごと交換しました。
・VT電圧再調整で正常値になりました。
・故障していたOSCトリマは青色トリマに交換して保管品としました。
■調整記録------------------------------------------------------------
※RF-IF部基板の調整(本体正面から見て右側の基板)
【本体正面・機能切替ボタン設定】
・FM MODE=MONO
・IF BAND=WIDE
・RF MODE=DX
【VT電圧確認】
・フロントエンド内[VT-GND]に直流電圧計接続
・90MHz時の電圧=実測値8.4V → TC5調整 → 23.0V
・76MHz時の電圧=実測値1.7V → 3.1V
【フロントエンド調整】
・IC3[HA12412] 13pin-GNDに直流電圧計接続
・SSG 76MHz、1kHz、100%変調、30dB
・受信周波数76MHzの位置でコイルL1,L2,L3,L4の間隔調整 → 電圧最大値
※コイル間隔の調整は難しいので触らない方が無難
・SSG 90MHz、1kHz、100%変調、30dB
・受信周波数90MHzの位置でトリマコンデンサTC1,TC2,TC3,TC4調整 → 電圧最大値
・上記作業を数回繰り返す
【IFTコイル調整】
・IC3[HA12412] 13pin-GNDにDC電圧計接続
・SSG 83MHz、1kHz、100%変調、30dB
・フロントエンド内IFTコイル調整 → 電圧最大値
・RF基板上の[T1]を調整 → 最大電圧
・IF BAND=NARROWに切り替え → 電圧値測定
・IF BAND=WIDEに戻して電圧測定 → VR2[WIDE GAIN]調整 → NARROW時と同じ電圧
【FM同調点の調整】
・[TP1-TP2] DC電圧計接続
・無信号状態でT2のIC側コアを調整 → 電圧=0V±30mVに。※調整前約480mV
・SSG 83MHz、1kHz、100%変調、60dB
・T2のIC反対側コアを調整 → 二次高調波最小
・上記作業を数回繰り返す
【FM LOCKED LEVEL調整】
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、30dB
・VR4[FM SIGNAL]を調整 → 本体正面[LOCKED]オレンジ色LEDが全灯する位置
【REC Level】
・VR5調整 416kHz -6dB
【本体正面・機能切替ボタン設定】
・FM MODE=STEREO
【VCO フリーラン周波数調整】
・SSG 83MHz、無変調、60dB
・TP1-TP4にDC電圧計接続 → VR105[OFFSET VCO]調整 → 電圧=0V±0.05V
・TP3[VCO]-GNDに周波数カウンター接続 → L101調整 → 304.000kHz
【PILOT OFFSET調整】
・SSG 83MHz、無変調、60dB
・TP2-TP5に直流電圧計接続 → VR104[PILOT OFFSET]調整 → 電圧=0V±0.1V
・SSG 83MHz、60dB、19kHzPILOT信号ON → ステレオランプ点灯を確認
【PILOT CANCEL調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・SSG 83MHz、60dB、19kHzPILOT信号ON
・本体正面のステレオランプ点灯を確認。
・L100、VR103L調整 → Lch波形観察 → 19kHz信号レベル最小
・VR106、VR103R調整 → Rch波形観察 → 19kHz信号レベル最小
【IF BAND=WIDE セパレーション調整】
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、70dB、Rchのみ信号、PILOT信号ON
・VR102L調整 → ※調整後実測62.2dB
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、70dB、Lchのみ信号、PILOT信号ON
・VR102R調整 → ※調整後実測64.2dB
【IF BAND=NARROW セパレーション調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、70dB、Rchのみ信号、PILOT信号ON
・VR101L調整 → ※調整後実測62.2dB
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、70dB、Lchのみ信号、PILOT信号ON
・VR101R調整 → ※調整後実測62.2dB
【MUTING LEVEL調整】右側RF基板
・音声出力をWaveSpectraに接続
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、25dB、ステレオ信号、PILOT信号ON
・VR3[MUTE]を調整 → ステレオランプ点灯し信号が出る位置へ
【AUTO STOP LEVEL調整】右側RF基板
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、30~35dB、ステレオ信号、PILOT信号ON
・VR1[FM.STOP]を調整 → オートサーチが有効な位置へ
【AM調整】
・LA1245-16ピン → AM Sメーター電圧測定
・T2、TC1,TC2
※VCO調整によってSTEREOランプが点灯しました。
■修理記録:蛍光表示管交換--------------------------------------------
・手元に届いたときから表示が暗いな、、と思っていましたが、
・通電しいるうちにさらに暗くなっていき、調整中にほとんど見えない状態に、、
・急激に輝度が劣化した原因がよく分かりません。
・あちこち触っているうちに私が壊した可能性が高いです。申し訳ありません。
・対策として部品取り用に保管していた別のTU-S707Xの蛍光表示管を移植しました。
・蛍光表示管はMPX基板の上の直接乗っている構造です。
・MPX基板を取り外すためにフレームを分解しました。
・分解方法はサービスマニュアルに掲載あります。
・表示は蘇りましたが、この表示管も「FM」の文字がやや暗いです。
■試聴----------------------------------------------------------------
・当初は再調整だけで済むかと思いましたが、予想外に大手術になりました。
・手間はかかりましたが各部再調整によって良い性能を取り戻したと思います。
・保管品の中から程度の良さそうなサイドウッドを装着しておきました。
・サイドウッドがあると外観は引き締まって見えます。