Quantcast
Channel: BLUESS Laboratory
Viewing all articles
Browse latest Browse all 593

PIONEER F-007 修理調整記録3

$
0
0

 ・2025年3月、F-007の故障機を譲り受けました
 ・FM受信時に頻繁に雑音が混入して使い物にならないそうです
 ・以下、復旧までの作業記録です

F00704

■製品情報--------------------------------------------------

 ・オーディオ懐古録 PIONEER F-007 95,000円(1978)
 ・オーディオの足跡 Pioneer F-007 95,000円(1979年頃)
 ・Hifi Engine PIONEER F-28 FM Stereo Tuner (1978)

F00702F00717

■クォーツロックシンセサイザー方式--------------------------

 ・F-007の特徴は何といってもPIONEER独特のクォーツロック方式
 ・以下はサービスマニュアル(英文)の回路説明を適当に意訳しました
  ・周波数を刻んだ目盛板の奥にコードパターンが配置されている
  ・指針ユニット内には9個のフォトトランジスタと2個のランプ内蔵
  ・内蔵ランプがコードパターンを照らしフォトトランジスタが読取る
  ・読み取った情報でローカル発振周波数を指定する
  ・基準周波数とローカル発振周波数を位相比較し発振周波数をロック
  ・この方式だと目盛りズレ皆無で高い精度のチューニングができる
  ・ローカル発振回路はバリキャップ2個搭載のツインバリキャップ仕様
  ・バリキャップは76.1~83.2MHzと83.3MHz~89.9MHz周波数範囲を分担
  ・分担する範囲を狭くすることでSN比を改善している

F00706F00745

■Parallel Balanced Linear Detector / PBLD -----------------

 ・パイオニアはこの検波方式を「超広帯域直線検波」と表記しています
 ・F-26以降では「Parallel Balanced Linear Detector:PBLD」と表記
 ・一般的には「分布定数形遅延線検波」と呼びます
 ・文献調査の結果が PIONEER F-26 の記録に残っています
【超広帯域直線検波】
 ・1974年 Pioneer TX-9900    140,000円
 ・1974年 Pioneer TX-8900     65,000円
 ・1975年 EXCLUSIVE F-3     250,000円
 ・1976年 Pioneer TX-8900II    65,800円
【Parallel Balanced Linear Detector / PBLD
 ・1977年 Pioneer F-26      135,000円
 ・1978年 Pioneer F-007 95,000円

■動作確認--------------------------------------------------

 ・外観は経年の汚れがあるが目立つ外傷はない
 ・FMアンテナを接続して電源オン
 ・周波数窓の照明点灯、Sメーター照明も点灯
 ・赤色LEDのインジケータ類点灯、指針に内蔵されたLOCKランプ点灯
 ・STEREOランプ点灯し名古屋地区のFM放送を受信しました
 ・正常な周波数でSメーター最大になるが、
 ・ただ周波数目盛とSTEREOランプが点灯する周波数が0.1MHzズレる
 ・STEREOランプが点灯するときはSメーターの振れが大幅に弱くなる
 ・さらに受信音に「ザザッ、ザザッ」と雑音が混入する
 ・IF BAND切換でWide/Narrowとも同じ雑音が混入する
 ・マルチパスH端子からも同じ雑音が聞こえる
 ・雑音発生時にメーター動作やインジケーターLEDに変化なし

■内部確認--------------------------------------------------

 ・フロントエンド=5連バリコン+ツインバリキャップOSC
 ・IF回路 WIDE / NARROW 切替
 ・M5109PR:PBLD検波
 ・PA3001A:クアドラチュア検波(同調点検出、Sメーター駆動)
 ・PA1001A:PLL MPX
 ・PA1002A:AF、MUTING動作

F00700

■修理記録:フロントエンド Q5:2SK61 ------------------------

 ・IF BAND切替でWide/Narrowとも同じ雑音が混入する
 ・マルチパスH端子からも同じ雑音が聞こえる
 ・固定出力端子をWaveSpectraに接続して波形観察すると
 ・「ザザッ、ザザッ」雑音に連動してノイズフロアが大きく変動
 ・制御用PA3001クアドラチュア検波出力を直接聞いても同じ雑音が混入
 ・そういえば以前も本機で同じ症状に対応したことを思い出しました
 ・フロントエンド Q5:2SK61 を確認すると3本の足が真っ黒です
 ・真っ黒になった足を歯間ブラシで丹念に磨いて汚れを落とすと、、
 ・期待通り「ザザッ、ザザッ」雑音は発生しなくなりました
 ・同じ 2SK61を使っているQ6も同処置をしておきました
 ・さらに足が真っ黒に変色しているICやTRも磨いておきました
 ・HA1201,LA1222,2SC461

F00721F00722

■調整記録--------------------------------------------------

【シンセサイザー基板】
 ・シンセサイザー基板から同軸ケーブルを抜く
 ・TP3 周波数カウンタ接続 → TC調整 → 10.2343MHz
 ・TP6 オシロスコープ接続 → 2ND,6TH調整 → 61.4MHz波形最大
 ・シンセサイザー基板に同軸ケーブル接続
 ・指針を76.1MHzにセット
 ・TP4 オシロスコープ接続 → LPF調整 → 399.8kHz方形波
【OSC VT電圧調整】
 ・TP9 → 電圧計セット
 ・指針を76.1MHzにセット → L6調整 → 1.07V
 ・指針を83.2MHzにセット → TC6調整 → 7.89V
【RF調整】
 ・SSG76.1MHz 30dB無変調 → L1~L5調整 → Sメーター最大
 ・SSG89.9MHz 30dB無変調 → TC1~TC5調整 → Sメーター最大
【IF調整】
 ・SSG83.0MHz 30dB無変調 → T1調整 → Sメーター最大
【同調点調整】
 ・TP28~TP29 → DC電圧計セット
 ・83MHz受信 → T8調整 → 電圧ゼロ
 ※0.1MHzの周波数ズレが解消しました
【IF歪調整】
 ・IF BAND=WIDE
 ・83MHz受信 → T1調整 → 高調波歪最小
 ・IF BAND=NARROW
 ・83MHz受信 → T2調整 → 高調波歪最小
【IF中心周波数調整】
 ・IF BAND=WIDE
 ・83MHz受信 → シンセサイザー基板TC調整 → 高調波歪最小
 ※調整範囲は微小です
【PBLD検波調整】
 ・83MHz受信 → VR1調整 → ※
 ※VR1を左右に大きく回し音声が出現する範囲の中間位置にセット
【コンパレータ調整 DC Null】
 ・TP23~TP24間 → DC電圧計セット
 ・83MHz受信 → VR5調整 → 電圧ゼロ
【MUTING調整】
 ・83MHz20dB受信 → VR2調整 → ミューティング作動
【Sメーター調整】
 ・83MHz100dB受信 → VR3調整 → Sメーター100dBf
【REC LEVEL調整】
 ・83MHz 1kHz 100%変調 → オーディオ出力レベル記録
 ・REC LEVEL CHECKオン → VR4調整 → -6dBセット
【VCO調整】
 ・TP13 → 周波数カウンタ接続
 ・83MHz変調オフ → VR1調整 → 76kHz
【パイロットキャンセル調整】
 ・83MHzステレオ変調 → VR2,T1調整 → 19kHz成分最小
 ・左右バランス注意
【セパレーション調整】
 ・IF BAND=WIDE
 ・83MHzステレオ変調 → VR3調整 → 反対ch漏れ信号最小
 ・IF BAND=NARROW
 ・83MHzステレオ変調 → VR4調整 → 反対ch漏れ信号最小


F00750

■試聴------------------------------------------------------

 ・修理後の再調整で雑音混入や周波数ズレの問題は解消しました
 ・セパレーション値が左右とも70dB、素晴らしい値です
 ・いずれ電解コンデンサ交換や電球のLED化にチャレンジしたいです

F00705

note:BLUESS Laboratory


Viewing all articles
Browse latest Browse all 593

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>