・2025年2月、F-757の故障機を研究用に寄付していただきました
・高い周波数のFM放送を受信できないそうです
・この機種は実機を見るのは初めてなのでとても楽しみ、、
・以下、作業記録です

■製品情報--------------------------------------------------
・オーディオの足跡 PIONEER F-757 ¥50,000(1990年発売)
・Hifi engine Pioneer F-757 AM/FM Synthesizer Tuner (1990)
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■動作確認--------------------------------------------------
・外観はF-777によく似ていますが最大の違いは選局ツマミが無いこと
・全体に経年の汚れ、天板に目立つ打痕、でも幸いにフロントパネルは良好
・FMアンテナを接続してFM受信テスト開始
・オート選局では名古屋地区のFM局すべて受信できました
・シグナルインジケーターはフル点灯、STEREOランプ点灯します
・アンテナA/B切換、IF BAND(NORMAL/SUPER NARROW)切換OK
・この状態では「異常なし!」と思ってしまいますが
・名古屋市内のFM局は82.5MHz以下の周波数が低めの局ばかりです
・そこで、信号発生器から83MHz以上の電波を送信して実験してみると、
・85MHz以上の周波数になると全く受信できないことを確認しました
・「高い周波数のFM局を受信できない」という事前情報通りでした
・これはちょっと不思議な現象です??
・一方AMは適当なループアンテナを接続してAM局の受信テスト
・名古屋地区のAM局はすべて受信できました
■内部確認-------------------------------------------------
・IF BAND=Normal → Wide
・IF BAND=Super Narrow → Narrow
・SSS:Spectrum Simulated Stereo モノラルを疑似ステレオにする機能
・IC201:PA5008 → クアドラチュア検波
・IC601:PA5007:PLL MPX(DDD TYPE IV)
・IC501:LA1247 → AM Tuner
・IC801:PD5132
・OSC発振回路はシールドカバーで覆われています
・興味本位でカバーを開けてみたら、
・F-717 同様にボンドでしっかり固められていました
・基板に印字された部品番号が極小サイズ、老眼オヤジにはルーペ必須です

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■調整記録--------------------------------------------------
【FM VT電圧調整】
・アンテナ入力なし、IF BAND=Normal
・TP1 → 電圧計セット
・90.0MHz → L18調整 → 24.0v±0.1v ★実測 15.1v
・76.0MHz → 確認のみ→ 7.5v±0.5v ★実測 7.5v
※L18を回してもVT電圧が15v以上に上がらない
※最大電圧のときのFM周波数が85MHz前後、、なるほど、、
※VT電圧が15v以下(76MHz〜85MHz)なら正常に受信できる訳です
■修理記録:電源回路の電解コンデンサ交換--------------------
・VT電圧は7.5v〜15v間は正常に変化するが15v以上に上がらない
・電源回路を調べたところOSC回路に繋がる+26vが出ていないと判明
【電圧確認】
・TP 8(+ 5v) → + 5.2v → 〇
・TP11(+13v) → +13.1v → 〇
・R702(+26v) → +19.0v → ×
・D701,D702,D703,D704,D705,D706の各電圧を測定して原因を考察
・怪しいのはC702(47uF/35v)と見当をつけて部品交換
・本機の底面には点検口がありません
・部品交換するには基板を裏返す必要があるので「気合」が必要です
・結果は、なんと先頭打者初球ホームラン!勘が当たりました
・外したC702外見には膨張や粉吹きなどの異常は見られませんが、、
・C702(47uF/35v)実測値 → 136uF,Vloss=39%,ESR=11Ω
・C702(47uF/35v)新品値 → 48uF,Vloss=0.8%,ESR=0.47Ω
・C702を新品交換後はVT電圧調整が正常値に設定できました
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■修理記録:タクトスイッチ洗浄------------------------------
・反応の悪いタクトスイッチがいくつかあったので洗浄しました
・スイッチ表面にエレクトロニッククリーナーを噴射
・スイッチのON/OFFを何度も繰り返して反応を復活させました
・不調スイッチだけ交換するとクリック感が違ってしまいます
・本来は全数交換がベストですが、ちょっと数が多いのでパスしました
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■調整記録--------------------------------------------------
【FM VT電圧調整】
・アンテナ入力なし、IF BAND=Normal
・TP1 → 電圧計セット
・90.0MHz → L18調整 → 24.0v±0.1v
・76.0MHz → 確認のみ→ 7.5v±0.5v 実測 7.5v
【FM同調点仮調整】
・IF BAND=Normal
・TP4〜TP5 → 電圧計セット
・83.0MHz受信 → T201(Det)コア調整 → 電圧0v±100mv
【RFトラッキング調整】
・IF BAND=Normal
・TP10 → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・76.0MHz受信 → L1,L2,L3調整 → 電圧最大
・90.0MHz受信 → TC1,TC2,TC3調整 → 電圧最大
・83.0MHz受信 → T3調整 → 電圧最大
・上記手順を数回繰り返す
【IF調整】
・IF BAND=Super Narrow
・TP10 → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・83.0MHz受信 → T101,T102,T103調整 → 電圧最大
・上記手順を数回繰り返す
【FM検波調整】
・IF BAND=Normal
・TP4〜TP5 → 電圧計セット
・音声出力 → Wavespectra接続
・83.0MHz受信 → T201(Det)コア調整 → 電圧0v±100mv
・83.0MHz受信 → T201(Dist)コア調整 → 高調波歪最小
・83.0MHz受信 → VR208調整 → 高調波歪最小
・上記手順を数回繰り返す
【SUB Balance調整】
・IF BAND=Normal
・TP3 → AC電圧計セット
・83.0MHz受信 → VR203調整 → 0.0v(AC)
【VCO調整】
・TP7 → 周波数カウンタ接続
・83.0MHz無変調 → VR601調整 → 38kHz±100Hz
【パイロットキャンセル調整】
・音声出力 → Wavespectra接続
・83.0MHzPilot → VR602調整 → 19kHz成分最小
【SUB調整】
・音声出力 → Wavespectra接続
・83.0MHzSUB信号 → L202調整 → Lchレベル最小
【ステレオ歪調整】
・音声出力 → Wavespectra接続
・IF BAND=Normal
・83.0MHz Lch → VR204調整 → 2次高調波歪最小
・IF BAND=Super Narrow
・83.0MHz Lch → VR205調整 → 2次高調波歪最小
【セパレーション調整】
・音声出力 → Wavespectra接続
・IF BAND=Normal
・83.0MHz Rch → VR206調整 → Lchオーディオ出力最小
・83.0MHz Lch → VR207調整 → Rchオーディオ出力最小
【MPX NR/ノイズリダクション調整】
・音声出力 → Wavespectra接続
・IF BAND=Normal
・MPX NRスイッチ ON
・83.0MHz Rch → VR301調整 → セパレーション値20dB
※VR301反時計回りに全開し、20dBになるまで戻す
【FMシグナルインジケーター調整】
・IF BAND=Normal
・TP2 → 電圧計セット
・83.0MHz,45dB受信 → VR202調整 → 5.0v±0.05v
・83.0MHz,75dB受信 → VR101調整 → 1.6v±0.05v
【AM VT電圧調整】
・アンテナ入力なし、IF BAND=Normal
・TP1 → 電圧計セット
・ 522kHz → L501調整 → 2.0v±0.2v
・1629kHz → TC502調整→ 16.0v±0.2v
【AM RF調整】
・TP6 → 電圧計セット
・ 603kHz → T501調整 → 電圧最大
・1395kHz → TC501調整→ 電圧最大
【AMシグナルインジケーター調整】
・TP6 → 電圧計セット
・999kHz,100dB受信 → VR501調整 → 5.0v±0.05v

■試聴------------------------------------------------------
・電源回路の故障とは意外でした
・上位機F-777との違いはAMステレオ対応の有無と選局ツマミですが、
・AMステレオは風前の灯火、選局ツマミはシンセ機には本来不要
・すっきりした高級感あるデザインのF-757は良い選択と思います
