・2024年8月、FX-711の修理調整作業を承りました
・以下、作業記録です
■製品情報--------------------------------------------------
・オーディオの足跡 VICTOR FX-711 ¥49,800(1987年頃)
・オーディオ懐古録 Victor FX-711 ¥49,800
・Hifi Engine JVC FX-1100 FM/AM Computer Controlled Tuner
・FX-711 取扱説明書 PDF形式
■動作確認--------------------------------------------------
【提供者様からの事前情報】
・FM放送が受信できない
・フロントエンドのトリマコンデンサ5個交換済み
【当方での確認事項】
・FMアンテナを接続して電源オン
・表示部が明るく点灯、輝度劣化や文字欠けは見当たらない
・オート受信で名古屋地区のFM局をすべて素通りして受信不可
・マニュアル選局で周波数を合わせても全く受信しない
・REC CALトーンは聞こえる
・AMはオート選局で名古屋地区のAM局受信OK
■内部確認--------------------------------------------------
・事前情報通りフロントエンドのトリマコンデンサTC101~TC105交換済み
・それ以外の修理痕は見当たらない
・所定の電圧チェック → 異常なし
・Q801-E(+30V)→ +29.1V
・Q803-E(+12V)→ +11.6V
・Q808-E(-12V)→ -12.2V
・Q805-E( +5V)→ + 5.1V
・J705-3pin(+5.6V)→ +5.7V ※電源基板
・J705-5pin(-35V) →-34.1.V ※電源基板
・これで受信できないという事は、、どこか部品故障か??
■受信できない原因はVT電圧の調整ズレ------------------------
・下記調整手順に従って受信調整を始めたところVT電圧に異常発見
・83MHz以上で28vを示して変化しない、、
【VT電圧】
・TP101 DC電圧計セット
・受信周波数 76MHz → L151調整 → 7.5V±0.1V ★13.4v
・受信周波数 90MHz → TC105調整 → 22.0V±0.1V ★28.8v
・TC105をそっと回してみると規定電圧(22.0v)にセットできました
・同時に下限76MHzでも7.5vに合わせることが出来ました
・続くRF調整を経てFM放送を受信できるようになりました
・たぶんトリマコンデンサ5個は交換だけで未調整だったようです
■修理記録:ステレオにならない------------------------------
【症状】
・調整作業を進める中で次なる不具合を発見
・STEREOインジケーターが点灯しない、実際のステレオ感も無い
・モノラル音声としては良い音が出ている
・不意にSTEREOインジケーターが点灯する瞬間があるが
・その時の音は激しい高調波歪が被った酷い音になる
【原因と対策】
・PLL検波までは正常、ステレオにならないのは原因はMPX回路か?
・いつもならVCO調整VRを回してみるところですが本機は無調整回路
・そこでCF401(456kHz)を調べてみると、何と発振していない!
・これを同等品セラロックに交換
・これによってSTEREOインジケーター点灯、ステレオ音声OK
・後続の左右セパレーション調整も完了できました
・下記調整手順に従って再度調整作業を行って完全復活しました
■調整記録--------------------------------------------------
●FM部
【VT電圧】
・TP101 DC電圧計セット
・受信周波数 76MHz → L151調整 → 7.5V±0.1V
・受信周波数 90MHz → TC105調整 → 22.0V±0.1V
・上記作業を数回繰り返す
【RFトラッキング調整】
・VR602 → 電圧計セット ※Sメーター電圧測定
・76MHz 40dB → L103,L104,L105,L106調整 → 電圧最大
・90MHz 40dB → TC101,TC102,TC103,TC104調整 → 電圧最大
【IFT調整】
・83MHz 1kHz 100%変調 40dB → T101調整 → 電圧最大
【PLL検波 VCO調整】
・TP104 周波数カウンタ接続
・受信バンド切替 → AM
・何も受信しない状態 → T208粗調整 → 10.7MHz±0.01MHz
・何も受信しない状態 → T208微調整 → 10.7MHz±0.01MHz
・受信バンド切替 → FMに戻す
【FM dB表示調整】
・83MHz 70dB → VR602調整 → 表示70dB
・83MHz 30dB → VR601調整 → 表示30dB
・上記作業を数回繰り返す
【モノラル歪調整:WIDE】
・IF BAND=WIDE
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → T204(黒)調整 → モノラル歪最小
【ステレオ歪調整:WIDE】
・IF BAND=WIDE
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → T202(黒)調整 → ステレオ歪最小
・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【ステレオ歪調整:NARROW】
・IF BAND=NARROW
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → T201(黒)調整 → ステレオ歪最小
・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【FM同調点調整】
・IF BAND=NARROW
・TP103 DC電圧計セット
・83MHz 70dB → T206調整 → 0V±1.5mV
【MUTINGレベル調整】
・MUTING=ON
・83MHz 20dB → VR604調整 → MUTING作動確認
【セパレーション調整】
・IF BAND=WIDE
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → VR401調整 → Lchもれ最小
・83MHz 70dB → VR402調整 → Rchもれ最小
・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【パイロット信号キャンセル調整】
・音声出力をWaveSpectra接続
・83MHz 70dB → VR403調整 → 19kHzもれ最小
・左右chのバランスに注意
【REC CAL調整】
・83MHz 70dB → 通常受信で出力レベル記録
・83MHz 70dB → VR404調整 → 上記記録-6dBに設定
・TONE 477Hz
●AM部
【VT電圧】
・TP102 DC電圧計セット
・受信周波数 522kHz → L302調整 → 1.8V±0.1V 実測1.8V
・受信周波数1629kHz → TC302調整 → 22.0V±0.1V 実測19.9V
・上記作業を数回繰り返す
【トラッキング調整】
・VR603 → 電圧計セット ※Sメーター電圧測定
・ 729kHz(NHK第一)受信 → L301調整 → 電圧最大
・1332kHz(東海ラジオ)受信 → TC301調整 → 電圧最大
・上記作業を数回繰り返す
【AM dB表示調整】
・999kHz 90dB送信 → VR603調整 → ※AMのdB値は適当
■試聴------------------------------------------------------
・本機のシグナルメーターはdB数値を表示するタイプですが、
・これがなかなか正確な値を示します
・上下2点調整するので30dB~70dBの範囲内は数値をほぼ信用できます
・ちゃんと調整すれば自宅の電波強度を調べるツールとして使えます
・その意味では貴重品です