・2024年3月、研究材料としてKT-1100Dの2台セットが届きました
・2台とも直せるか、それともニコイチ合体か、
・以下、作業記録です
■製品情報--------------------------------------------------
・オーディオの足跡 KENWOOD KT-1100D ¥74,800(1987年頃)
・KENWOOD チューナーカタログ 1986年11月版
■動作確認--------------------------------------------------
・外観の状態は2台とも良好ですが、一方は脚が4個とも欠損しています
・そこで両機を識別するため「脚あり」「脚なし」と表記します
<上段:脚あり>
・電源コードの印字「1990」
・電源オン、表示部に周波数やインジケーターが明るく点灯
・表示部の文字欠けや輝度劣化はない
・AUTO選局上り方向 → すべての放送局を素通りして受信不可
・AUTO選局下り方向 → -0.2MHzの周波数で受信できる局あり
・シグナルインジケーターはほとんど点灯しない、受信感度低下
・一方AM放送は適当なループアンテナで受信確認OK
・FM受信で同調点ズレ、受信感度低下といった症状を確認しました
<下段:脚なし>
・電源コードの印字「1990」
・電源オン、表示部に周波数やインジケーターが明るく点灯
・表示部の文字欠けや輝度劣化はない
・AUTO選局上り下り方向とも本来の周波数ですべてのFM局を受信OK
・シグナルインジケーターはフル点灯しSTEREOランプも点灯
・RF DIRECTでも十分受信可能、各種機能切換OK、REC CALトーンOK
・AM放送も適当なループアンテナで受信確認OK
・脚が無いこと以外は特に不具合なさそうです
■内部確認--------------------------------------------------
<上段:脚あり>
・特記事項なし
<下段:脚なし>
・電源スイッチ後方にある小さな基板(X13-)が緑色の両面基板した
・それと電源スイッチが載った縦置き基板も緑色の両面基板でした
・今まで20台以上のKT-1100Dを見てきましたが緑色両面基板は初対面!
■調整記録--------------------------------------------------
【VT電圧】
・TP6~TP7 → DC電圧計セット
・76MHz → L14調整 → 3.0V±0.1V
・90MHz → TC1調整 →25.0V±0.1V
★<上段:脚あり>TC1調整で反応が過敏で不安定
【検波調整】
・TP10~TP11 → DC電圧計セット
・83MHz受信 → L9調整 → 0.0V±10mV
・TP12~TP13 → DC電圧計セット
・83MHz受信 → L12調整 → 0.0V±10mV
【RF調整】
・R67左側 → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・83MHz → L1,L4,L7,L18調整 → 電圧最大
【IFT調整】
・R64左側 → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・83MHz → L10調整 → 電圧最大
【AUTO STOP=MUTING調整】
・83MHz 30dB → VR1調整
【TUNING METER調整】
・83MHz → 本体左側小基板VR2調整 → ※
※中央の縦白セグメント点灯、両側の赤縦セグメントの中点へ
【SIGNAL METER調整】
・83MHz → 本体左側小基板VR3調整 → ※
※バーグラフの点灯レベル調整
【MPX VCO調整】
・TP14 → 周波数カウンタ接続
・83MHz → VR4調整 → 19kHz
【SUB CARRIER調整(38kHz)】
・音声出力 → Wavespectra接続
・83MHz SUB信号 → L25調整 → Lchレベル最大
【歪調整1 DLLD】
・83MHz(MONO)→ VR3:DET調整 → 歪最小
【歪調整2 MONO】
・83MHz(MONO)→ VR4:MONO2調整 → 二次歪最小
【歪調整3 MONO】
・83MHz(MONO)→ VR6:MONO3調整 → 三次歪最小
【歪調整4 STEREO】
・83MHz(L/R)→ VR5調整 → 歪最小
【歪調整5 STEREO】
・83MHz(SUB)→ VR7調整 → 歪率最小
【歪調整6 NARROW】
・83MHz(MAIN)→ VR2調整 → 歪率最小
【SEPARATION調整 WIDE】
・IF BAND:WIDE
・83MHz → VR2調整 → L信号もれ最小
・83MHz → VR3調整 → R信号もれ最小
【SEPARATION調整 NARROW】
・IF BAND:NARROW
・83MHz → VR1調整 → 信号もれ最小
【DEVIATION調整】
・83MHz → 本体左側小基板VR4調整 → 100%位置
【AM簡易調整】
・TP6~TP7 → 電圧計セット
・522kHz → L20調整 → 実測 1.5V 確認のみ
・1629kHz→ TC2調整 → 実測 8.0V 確認のみ
・ 729kHz NHK第一放送受信 → L21調整 → Sメーター最大
・1332kHz 東海ラジオ受信 → TC3調整 → Sメーター最大
・1053kHz CBCラジオ受信 → L22調整 → Sメーター最大
■修理記録:OSCトリマコンデンサ交換---------------
<上段:脚あり>
・VT電圧調整時、TC1の反応が過敏で電圧が安定しない
・そこでTC1/10pFを新品に交換しました
・再調整後はVT電圧がピタッと決まりました
<下段:脚なし>
・調整作業を通して特に不具合は無かったのですが、
・上段機の事例を鑑みてTC1を予防交換しておきました
■試聴--------------------------------------------
・電源コードの印字はどちらも「1990」
・2台とも背面パネルにAMアンテナホルダーを取り付ける穴がない
・これは製造末期の個体の特徴です
・両機のシリアル番号を見比べてみると製造ラインは同じ
・<上段:脚あり> ******175
・<下段:脚なし> ******080 ※緑色両面基板
・末尾の個別番号はわずか95番違い
・それでも若い番号の個体だけ緑色の両面基板を採用
・どんな事情があったのでしょう?