・2024年2月、ナカミチ製レシーバーTA-20の故障機が届きました
・TA-30 の修理調整記録をご覧になった方からご提供いただきました
・外観は上位機のTA-30とよく似ていますが両機の違いに興味津々、、
・以下、復活までの記録をまとめました
■製品情報-------------------------------------------------
・オーディオの足跡 Nakamichi TA-20 ¥85,000(1989年頃)
・Hifiengine Nakamichi TA-20 High Definition Tuner Amplifier
※機種名の違いは輸出先の違い
・TA-2A:U.S.A & Canada
・TA-2E:Europe
・TA-2 :Other & Australia
・TA-20:Japan
【TA-30との見た目の相違点】
・映像入力(S端子)がない
・入力系統(Phono、CD、Tape、Video)が少ない
・スピーカー端子がワンタッチ式の簡易型
・Subsonic filter ボタンがない
・ボリュームつまみ内側に仕込まれた緑色LEDがない
■動作確認-------------------------------------------------
<提供者様からの不具合情報>
・どの入力でも左chの音が小さいが音量を上げると左右同レベルになる
・チューナーだけ音が出ない、そもそもチューナー部が機能していない
<当方での確認事項>
・正面から見ると、本体サイズや外観はTA-30とそっくりですね
・ただ背面パネルの端子群を見ると機能差がよく分かります
・フロントパネルの状態は良好、目立つキズはありません
・実験用SP、FM/AMアンテナ、CDプレーヤーを接続して動作確認開始
・電源投入直後にリレー動作音が聞こえて Power Mute動作OK
・フロントパネルのチューナー部に周波数が緑色表示される
・オート選局ボタンで周波数がUp/Downする
・しかし、FM/AMとも放送は全く受信不能、局間ノイズも出ない
・FM/AMの文字点灯しない、シグナルインジケーター全く点灯しない
・MODE切換(AUTO/Manual)インジケーターも点灯しない
・8の字セグメントの一部が表示薄く(輝度劣化)なっている
・チューナー部は機能せず完全に死んでいる感じです
・続いて外部CDプレーヤーを各入力端子に接続して音出し実験
・入力端子:CD、Tape、Video → それぞれ音出しOK
・レコードプレーヤーTechnics SL-5にてPhono端子チェック
・入力端子:Phono → 音出しOK
・左chの音が小さいとのご指摘でしたが、今のところ正常です
■内部確認--------------------------------------------------
・TA-30との相違点を探しながら内部確認開始
・基板は2階建て構造、底板を開けると1階基板のハンダ面が見える
・メイン電源トランスのサイズが一回り小さい
・チューナー回路用電源トランスはたぶん同じ
・ヒートシンクに張り付いたトランジスタの型番が異なる
・映像信号を処理する基板が無いので1階基板まで見通しがよい
・チューナー回路はTA-30と全く同じ
・TA-30と同じ場所、1階のトランジスタ周辺が高熱で焦げています
・それでも今回は基板の亀裂、プリント配線の断裂は無かったです
・TA-20のサービスマニュアルにもTR修理に関する追加情報ありました
・Q525:2SA733 → 2SA953
・ただTA-30とは違ってロジック基板のTRに対する交換指示
・実際の基板で確認すると交換済みでした
■修理記録:チューナー部が動作しない-----------------------
・チューナー部だけ全く機能していないので電源系統から確認開始
・まずメイン基板でチューナー回路に電源供給する【CN-21】を確認
・【CN-21】規定値+30v、+12v、+13vに対して実測値2~3v
・これは電源基板に原因がありそうと考えて調査を進めていくと、
・原因は、チューナー用トランス直下のヒューズ劣化でした
・ヒューズ切れではなく、ヒューズが約1MΩの抵抗と化していました
・F401:500mA/250v
・これを新品に交換したところチューナー部が動き出しました
・FM/AMともオート受信OK、STEREOランプ点灯します
・-0.1MHzの周波数ズレがありますがこれは後述の受信調整で修正可能
・周波数部の8の字セグメントの一部に輝度劣化があるのが残念
・それでもまず第一関門はクリアしました
・念のためアンプ回路用ヒューズF403:4A/250vも確認したところ
・F403両端抵抗が約300Ωもあったのでここも新品交換
・交換による効果は実感できませんが多分何からの効果はあったはず?
■修理記録:電源回路のハンダクラック------------------------
・TA-30と同様に1階の電源回路のTR周辺が黒く焼け焦げています
・裏面も茶色に変色していますが、基板の亀裂や断線はありません
・ただ該当TRの足元でハンダクラックが多数発生していました
・高温による茶色の変色域すべてのハンダをやり直しました
■修理記録:リレー接点--------------------------------------
・片方だけ音が小さかったり雑音が入る原因はリレーの可能性が大きいか?
・そこで電源基板とメイン基板のリレー接点を磨いてみました
・基板に装着した状態のままリレーの上蓋を開ける
・細長く切った厚紙にエレクトロニッククリーナー液を浸透させる
・厚紙を接点に差し込んた状態で強制的に接点に挟んで引き抜く
・この動作を数回繰り返す
・作業後の厚紙が黒く変色したので洗浄効果はあったと思います
■修理記録:可変抵抗の接点----------------------------------
・左右chの音量差の原因としては可変抵抗もありそうです
・可変抵抗(音量VR、バランスVR、ラウドネスVR)
・ここはエレクトロニッククリーナーを隙間から注入して洗浄しました
・ラウドネスVRは正面パネルを外すとアクセスできます
・何度も往復させて馴染ませました
■調整記録-------------------------------------------------
【アイドル調整】
・入力切換=CD、スピーカー切換=OFF、音量ボリューム=最小
・TP7-TP8 ハンダ面で電圧計セット → VR301調整 → 25mV Lch
・TP9-TP10 ハンダ面で電圧計セット → VR302調整 → 25mV Rch
【FM VT電圧】
・TP11~GND 電圧計セット
・76.0MHz → 3.3v ※確認のみ
・90.0MHz → 18.0v ※確認のみ
【FM同調点調整】
・TP1~TP2 → 電圧計セット
・Tape Rec出力 → Wavespectra接続
・83.0MHz受信 → T104調整 → 0v
・83.0MHz受信 → T105調整 → 高調波歪最小
・83.0MHz受信 → フロントエンドIFT調整 → 高調波歪最小
【ミューティング調整】
・83.0MHz,30dB受信 → VR102調整 → MUTING作動位置
【Sメーター調整】
・83.0MHz,60dB受信 → VR105調整 → シグナルインジケーター全点灯
【セパレーション調整】
・Tape Rec出力 → Wavespectra接続
・83.0MHz受信 → VR103調整 → 漏れ信号最小
【AM VT電圧】
・TP5~TP6 電圧計セット
・522kHz → T103調整 → 1.0v
・1629kHz → 7.2v ※確認のみ
【AM受信調整】
・729kHz(NHK)受信 → T101,T102,L102調整 → Sメーター最大
・1332kHz(東海)受信 → TC101調整 → Sメーター最大
・1053kHz(CBC)受信 → VR101調整 → Sメーター点灯具合調整
■試聴------------------------------------------------------
・TA-30同様にフロントパネルのデザインがカッコよくて好みです
・映像回路を省略した回路構成もシンプルで好感が持てます
・ただ、スピーカー端子だけはケチらないで欲しかった、、残念