・2023年12月、555ESの故障機が届きました
・専用の音声信号ケーブルも同梱されていました
・以下、作業記録です
■製品情報--------------------------------------------------
・オーディオ懐古録 SONY ST-S555ES FM STEREO TUNER ¥65,000
・オーディオの足跡 SONY ST-S555ES ¥65,000(1982年頃)
・Hifi Engine Sony ST-S555ES FM Stereo Tuner (1982-87)
・555ESと555ESX、型番は似ていますが中身は別物です
・555ES → ST-J75やST-JX8とほぼ同じ構造
・555ESX → その後の333シリーズに繋がる基本形
■動作確認--------------------------------------------------
・外装に目立つキズは無いが全体に経年の汚れ
・放熱口から内部を覗くと大量のホコリが見える
・さて、テスト環境に設置してFM局の受信を試行
・付属の専用ケーブルを介してアンプに接続
・電源オンで周波数など表示部点灯、文字欠けや文字痩せはない
・各切換ボタンの操作に応じて表示内容は切り換るが、、
・オート選局ではすべてのFM局を素通りして受信不可
・マニュアル選局でも同様に受信不可
・MUTINGオフでも受信不可
・アンテナ切換 A/B どちらも受信不可
・IF BAND Wide/Narrow ともに受信不可
・唯一REC CALトーンだけは聞こえました
■内部確認--------------------------------------------------
・基板上の大量のホコリが堆積している
・まずは掃除機で吸い取り、さらにエアと刷毛で丹念に清掃
・部品交換歴は無さそうなので多分オリジナル状態です
・アンテナ2系統:B系は-20dBのアッテネーターをON/OFF可能
・フロントエンドは5連バリキャップのパッケージ品
・IF段:WIDE/NARROW切換式、Sメーター専用回路あり
・FM同調点検出:LA1235(クアドラチュア検波)
・検波部:レシオ検波
・復調部:uPC1223C
・テストポイント(TP3)でVT電圧確認 → 0v
・76MHz~90MHz区間全域でVT電圧=0v 変化なし
・これでは受信できるはずないですね
■修理記録:VR601交換---------------------------------------
・まず最初に電源系統の電圧チェック
・すべてのヒューズ抵抗確認 → 異常なし
・続いてTP3(PLL) でVT電圧確認
・本来なら76MHz → 1.8v
・ところが 0.2vを示したまま76MHz~90MHz全区間で変化しない
・原因究明のためまずはPLL回路の点検からスタート
・IC601(CX778A) → Q601(2SK30A) → Q602(2SC1362)
・調査の結果 RT601(102)の抵抗値が無限大、断線状態でした
・これを同値の半固定抵抗に交換したところ
・VT電圧が出現し規定値に設定できました
・外形サイズが違うので足を細工して取付けました
・後述の調整作業でFM受信できるようになりました
・RT601は見た目も回転フィーリングも問題ないのに故障でした
・実は、、今回と全く同じ故障事例が過去にありました
・SONY ST-JX8 修理調整記録3 2023年4月30日記事
・同じPLL回路の同じ半固定抵抗の故障、これは偶然か??
・ST-JX8(1981)、ST-S555ES(1982)
・両機の製造時期はほぼ同じなので
・同じ製造ロットの部品が使われていたかも?
■修理記録:黒ずんだICの足を磨く----------------------------
・上記修理によってFM放送を受信できるようになりました
・後述の調整手順もすべてクリアできました
・しかし受信中に「ザザッ、、ザザッ、」と雑音不定期に混入します
・WaveSpectraの波形でベースラインが上下する動きに連動するよう
・この手の雑音は発生源を探すのが厄介です
・まず最初にアースバーのハンダクラック対策
→目視で分かるクラックは無いが念のため全個所再ハンダ
→効果なし
・すべてのハンダ箇所をルーペで観察
→目視で分かるクラック無し
・真っ黒に変色したICやTRの足を磨く(マイグレーション対策)
→IC103(TL071CP),IC203,IC204(TL072CP)→ 効果なし
→IC605(TMS1024NLL)→ ★当たり!
→雑音が解消しWaveSpectraの波形もキレイに安定しました
→暗黒物質が電源ラインかGNDラインに影響していたか?
・その他の黒ずんだパーツの足も磨いておきました
→IC103(TL071CP),IC203(TL072CP),IC204(NE5532P),IC602(761A)
・足の磨き方
→足の表面はエレクトロニッククリーナーを噴射して歯ブラシで磨く
→裏側は100円ショップで買えるSSサイズの「歯間ブラシ」で磨く
■調整記録--------------------------------------------------
【VT電圧調整】
・TP3 → 電圧計セット
・76MHz → RT601調整 → 1.8v
【FM同調点調整】LA1235クアドラチュア検波
・R127両端 → 電圧計セット
・83MHz受信 → IFT101調整 → 電圧0v
【フロントエンド調整】
・LA1235 13ピン → 電圧計セット(Sメーター電圧)
・83MHz受信 → トリマコンデンサ(2個)調整 → 電圧最大
【レシオ検波調整】
・TP1 → 電圧計セット
・音声出力 → WaveSpectra観測
・83MHz受信 → IFT102(黒)調整 → 電圧0v
・83MHz受信 → IFT102(赤)調整 → 高調波歪最小
【シグナルインジケーター点灯調整】
・RT301,RT302,RT303 → 反時計回りに回しきる
・83MHz,55dB受信 → RT301調整 → 点灯レベル 5
・83MHz,55dB受信 → RT302調整 → 点灯レベル 6
・83MHz,80dB受信 → RT303調整 → 点灯レベル10
【MUTING調整】
・IF BAND → WIDE
・83MHz,20dB → RT202調整 → MUTING作動位置
・IF BAND → NARROW
・83MHz,20dB → RT101調整 → MUTING作動位置
【VCO調整】
・TP2 → 周波数カウンタ接続
・83MHz(無変調)受信 → RT203調整 → 76kHz
※TP2に代えてR228左足で測定
【パイロットキャンセル調整】
・音声出力 → WaveSpectra観測
・83MHz受信 →L201,RT202調整 → 19kHz成分最小
【セパレーション調整】
・音声出力 → WaveSpectra観測
・83MHz受信 → RT201調整 → Lch信号最小
・83MHz受信 → RT251調整 → Rch信号最小
【オーディオ出力調整】
・R215左足 → AC電圧計セット
・83MHz受信 → RT204調整 → Lch 0.775v
・R265右足 → AC電圧計セット
・83MHz受信 → RT254調整 → Rch 0.775v
【CAL TONE調整】
・83MHz調整 → RT401調整 → -6dB / 398Hz
■試聴------------------------------------------------------
・セパレーション値は左右とも60dB超、とても優秀です。
・ただ専用のACTケーブルの効果は、よく分かりません?