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KENWOOD L-02T 修理調整記録3

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 ・2022年6月、KENWOOD L-02Tの故障機が届きました。
 ・外観はジャンク級、動作もいろいろ不具合があるそうです。
 ・かなり時間がかかった修理記録です。

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■製品情報-----------------------------------------------------------

 ・オーディオ懐古録 KENWOOD L-02T FM STEREO TUNER \300,000
 ・オーディオの足跡 KENWOOD L-02T \300,000(1982年頃)
 ・Hifi Engine Kenwood L-02T FM Stereo Tuner (1982-83)
 ・KENWOOD L-02T 取扱説明書 (日本語版、PDF形式)
 ・1号機の記事 に詳細な記録があります。

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■動作確認-----------------------------------------------------------

 ・外観はスリ傷、打ち傷多数あり。おまけにヤニ汚れがこびり付いている感じ。
 ・ボディ上面後方にある放熱口(スリット)もゴミと汚れで塞がりそう。
 ・4個の脚のうち1個が破損、外観はかなり難ありの状態です。
 ・さて、アンテナA端子に75Ω同軸ケーブルを接続して電源オン。
 ・三つのメーターの照明点灯。指針が赤く浮かび上がる。
 ・各種機能の動作状態を示す赤いインジケータ点灯。
 ・SERVO LOCK ON の状態で名古屋地区のFM局を受信しようとすると、
 ・Tメーターは中点を示すがSメーターの振れ具合がかなり小さい。
 ・MONO音声での受信は可能だがSTEREOインジケーターが点灯しない
 ・試しに信号発生器から基準信号(83.0MHz ST信号)を120dBで送信すると、、
 ・Sメーターの振れ具合はあまり変わらない。
 ・アンテナ切換(A/B)不可。Aのまま、Bを選択できない。
 ・RF切換(DIRECT/NORMAL)不可。DIRECTのまま、NORMALを選択できない
 ・メーター切換(MULTIPATH/DEVIATION)不可。MULTIPATHのまま
 ・IFバンド切換(WIDE/NARROW)不可。WIDEのまま、NARROWを選択できない
 ・外観はジャンク級、動作も不具合が多々ありそうです。

■内部確認-----------------------------------------------------------

 ・天板は背面3本のネジを外してから後方にスライドして外すのですが、
 ・強引に外そうとした先人がいたようです。
  ・後方にある通気口接続部品が破損 → ホットボンドで補修しました
  ・天板を固定する金具も無残に変形 → ペンチで力業で修正しました
 ・天板を開けると、ホコリとともに「木くず」が堆積していました。
 ・のこぎりで木材を切断したときに出る「木くず」みたいです。
 ・さらにタバコのヤニ汚れが加わってネットリ状態でした。
 ・基板上のICやトランジスタの足が錆びたり黒ずんだりしているもの多数。
 ・まずはボディをバラバラに分解して汚れやホコリの除去。
 ・天板、側板、フロントパネルは中性洗剤で丸洗いました。
 ・でも残念ながらそれほど綺麗にはならなかったです。
 ・分解して分かった事は底板右前足付近の陥没と左側面のフレーム変形
 ・どうやら落下破損歴もありそうです。

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■動作確認2---------------------------------------------------------

 ・再度組み立てて仮調整したところSTEREOランプ点灯しました。
 ・しかし、、
  ・メーター切換、RF切換、アンテナ切換、IFバンドの切換できません。
  ・受信感度がかなり低いまま。これはRF切換がDIRECT固定状態だから?
  ・ノイズフロアが不定期に上下するので電源系統の不具合もありそう?
  ・テストトーンの音量が爆音レベルでVR5を回しても調整不可。

■国内機と海外機の比較------------------------------------------------

 ・切換スイッチが反応しない原因は通常はタクトスイッチの故障を疑いますが、
 ・これだけ複数のスイッチ不良が同時に生じるという事は回路に問題があるかも?
 ・切換スイッチ不良の原因を探るため海外版回路図と実機を比較点検しました。
 ・その過程でスイッチに割り当てられた機能がかなり異なることに気付きました。
 ・今さらですが、、海外機との違いがいろいろあって新発見でした。

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【海外機】
 ・アンテナ入力1系統(A)のみ
 ・背面パネルのアンテナ端子横に DE-EMPHASIS切換スイッチ(75us-50us)あり
 ・正面にはDE-EMPHASIS切換スイッチ(NORMAL-25us)あり
 ・DEVIATIONメーターの位置に周波数デジタル表示あり
 ・このためSIGNAL/MUNTIPATHを切り換えるスイッチあり
 ・海外機の回路図を読むときはスイッチ名を読み替えて追う必要ありです。
 ・MPX基板にDEVIATION検出回路はあるがメーターが無いので信号は使われていない

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■修理記録:切換スイッチ不動------------------------------------------

 ・METER切換:MULTIPATH点灯、DEVIATIONへ切換不能
 ・RF SELECTOR:DIRECT点灯、NORMALへ切換不能
 ・ANTENNA切換:A点灯、Bへ切換不能
 ・IF BAND切換:WIDE点灯、NARROWへ切換不能

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 ・これら4系統のスイッチ回路を輸出機の回路図で確認
 ・すると4系統の信号が共通して通過する IC12(TC4044BP)が怪しい?
  →TC4044BP:Quad 3-State R/S Latch (Quad NAND R/S latch)
 ・これをネット検索したところ若松通商に在庫ありました。
 ・早速入手して交換して動作確認すると、結果は4回路中3勝1敗。
 ・RF切換、アンテナ切換、IFバンド切換は正常動作するようになりました。
 ・特にRF切換でNORMALを選択したところSメーターが大きく振れました。
 ・ただ、メーター切換(DEVIATION / MULTIPATH)が依然として不動。
 ・正確にはインジケーターLEDの点灯は切り換わるがメーター針が不動です。
 ・つまり IC12(TC4044BP)交換によってLEDの切換回路は復旧したようです。
 ・続いてメーター切換信号が単独で通過する経路を辿ると、、
 ・IC7(TC4007UBP)これが怪しそう??
  →TC4007UBP:Dual Complementary Pair Plus Inverter
 ・ネット捜索でモトローラ社MC14007UBをヤフオクで発見
 ・これを入手して交換したところ、、結果はストライク!
 ・メーター切換(DEVIATION / MULTIPATH)できるようになりました
 ・DEVIATION選択時にMPX基板VR12で変調度100%に設定できました。

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■修理記録:コイン型電池交換------------------------------------------

 ・コントロール基板にコイン型電池(+3v)が実装されています。
 ・この電池は IC11(TC9130P-16pin)に繋がっています。
  →TC9130P:4CH INDEPENDENT CYCLIC TYPE TOUCH SWITCH
 ・アンテナ切換やIFバンド切換の選択状態を保持する役目です。
 ・ただ実際には電源オフ時に選択状態を保持できていません。
 ・そこでラグ付き電池を外し、リード付きホルダにCR2032を装着。
 ・チャック袋に入れた状態で本体フレームに結束バンドで固定しました。

■動作確認3----------------------------------------------------------

 ・切換スイッチが正常動作するようになったので動作確認をもう一度。
 ・ほとんど振れなかったSメーターが大きく振れるようになった。
 ・RF切換=NORMALにするとさらに大きく振れる、RFアンプが効いています。
 ・アンテナ(A/B)切換OK
 ・IFバンド(WIDE/NARROW)切換OK
 ・フロントエンド、IF基板、MPX基板を一通り調整
 ・STEREOランプ点灯OK、セパレーション値も良好です
 ・WaveSpectraで観察する基準音の波形もきれいです。
 ・あとの不具合はREC CAL信号の爆音問題。
 ・REC CALスイッチオンにするとテストトーンの音量が爆音レベル
 ・調整用VR5を回しても音量が変化しない

■修理記録:REC CAL回路-----------------------------------------

 ・REC CAL調整用VR5を回しても音量が変化しない
  ・IC32(NJM4558)→ 4558DD
  ・IC 2(MB84006B)→ TC4006BP
  ・C60(1uF/50v)→ 1uF/50v
  ・C69,C70(10uF/35v) → 10uF/50v
  ・Q29(2SK301)→ 2SK107★
  ・Q30(2SC945)2SC1845
 ・OSC発振回路で怪しそうな部品交換するも爆音は解消しない??
 ・抵抗、ダイオードも外して点検し問題なし、、
 ・消去法で残ったのは レベル調整用VR5(10kΩ/103)
 ・VR5を交換したところ、、当り!、爆音が収まりました
 ・VR5は見た目も操作感も問題ないのに、回したも抵抗ゼロΩでした、、
 ・無駄な部品交換をしてしまいました。
  ★備忘録:2SK301の代替品
  ・2SK23の代用品として 2SK301が使えるというネット情報がありました。
  ・2SK107も2SK23の代用実績(ST-5130)があります。
  ・2SK301を2SK107に交換。これでも使えています。

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■修理記録:基板洗浄-------------------------------------------------

 ・基板上も多くのICやトランジスタの足が錆びたり黒ずんだりしている。
 ・本当は全数部品交換したいところですが、膨大な作業になりそう、、
 ・そこで今回はエレクトロニッククリーナーで簡易洗浄するに止めました。
 ・基板上の部品にエレクトロニッククリーナーを少量噴射し硬めの歯ブラシで磨く
 ・綿棒で拭き取ったあとエアダスターを噴射して強制乾燥させる
 ・電源基板、IF基板、MPX基板、コントロール基板でこの作業を繰り返しました
 ・効果の程は分かりません??

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■調整記録-----------------------------------------------------------

【セッティング】
 ・QUIETING:AUTO
 ・IF BAND:WIDE
 ・REC CAL:OFF
 ・LPF:OFF
 ・MUTING:OFF
【Sメーター調整 (1)】
 ・83MHz,60dBu,Dev0 → IF基板 L15調整 → Sメーター最大
【Tメーター調整 (1)】
 ・83MHz,60dBu,Dev0 → IF基板 L12調整 → Tメーター中点
【トラッキング調整】
 ・76kHz,40dBu,Dev0 → FE基板 L1,L2,L3,L4,L5,L6,L13調整 → Sメーター最大
 ・90kHz,40dBu,Dev0 → FE基板 TC1,TC2,TC3,TC4,TC5,TC6調整 → Sメーター最大
 ・数回繰り返す
【Tメーター調整 (2)】
 ・IF BAND:NARROW
 ・電波無し、指針83MHz位置 → IF基板 L7調整 → Tメーター中点
【Sメーター調整 (2),(3)】
 ・IF BAND:NARROW
 ・RF SELECTOR:DIRECT
 ・83MHz,45dBu,Dev0 → IF基板 VR2調整 → Sメーター 50dBf
 ・83MHz,65dBu,Dev0 → IF基板 VR4調整 → Sメーター 70dBf
 ・数回繰り返す
【Sメーター調整 (4)】
 ・83MHz,65dBu,Dev0 → IF基板 VR3調整 → Sメーター 70dBf
 ・数回繰り返す
【REC CAL調整】
 ・REC CAL:ON
 ・固定出力端子にAC電圧計セット → MPX基板 VR5調整 → -6dB
 ・430Hz
【VCO調整】
 ・MPX基板 IC1:TR7040 2pin~18pin間 → 周波数カウンタ接続
 ・83MHz,80dBu,Dev0,Pilot → MPX基板 VR1調整 → 19kHz
【Pilotキャンセル調整】
・固定出力端子にSpaceSpectra接続
 ・83MHz,80dBu,Dev0,Pilot → MPX基板 VR2,L1調整 → 19kHz成分最小
【オフセット(OFS)調整】
・IC10-7pin ~ GND DC電圧計セット
 ・83MHz,60dBu,Dev0,Pilot → MPX基板 VR3 調整(Lch) → 0v ※実測+325mV
・IC19-7pin ~ GND DC電圧計セット
 ・83MHz,60dBu,Dev0,Pilot → MPX基板 VR4 調整(Rch) → 0v ※実測-258mV
【マルチパスメーター調整】
 ・38kHz AM変調10%
 ・83MHz,60dBu,38kHz AM Dev10% → MPX基板 L16,L17,L18 調整 → マルチパスメーター最大
【歪調整(MONO)】
 ・83MHz,80dBu,1kHz±75kHz → IF基板 L1,L2,L3,L4,L5 → 高調波歪最小
【歪調整(STEREO WIDE)】
 ・83MHz,80dBu,1kHz±68.25kHz,SUB信号 → IF基板 L32(色なし) → 高調波歪最小
【歪調整(STEREO NARROW)】
 ・IF BAND:NARROW
 ・83MHz,80dBu,1kHz±68.25kHz,SUB信号 → IF基板 L34(色なし) → 高調波歪最小
【セパレーション調整(WIDE)】
 ・IF BAND:WIDE
 ・83MHz,80dBu,1kHz±75kHz,R信号 → MPX基板 VR8 → Lch 最小
 ・83MHz,80dBu,1kHz±75kHz,L信号 → MPX基板 VR10 → Rch 最小
【セパレーション調整(NARROW)】
 ・IF BAND:NARROW
 ・83MHz,80dBu,1kHz±75kHz,R信号 → MPX基板 VR9 → Lch 最小
 ・83MHz,80dBu,1kHz±75kHz,L信号 → MPX基板 VR11 → Rch 最小
【SCA調整】
 ・DARC信号を入れて音声出力波形を確認 → 影響なし
 ・MPX基板 VR6(Lch),VR7(Rch)ノータッチ

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■試聴---------------------------------------------------------------

 ・ジャンク級のL-02Tが一応使えるレベルまで復活しました。
 ・最近は切換スイッチの内部故障やロジックICの故障に頻繁に遭遇します。
 ・超高級機といえどもさすがに40年も経てば不具合は出ますよね。


L02t07

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