・2021年2月、YAMAHA CT-7000 に触れる機会を得ました。
・発売当時に購入されたワンオーナー機だそうです。
・最近になって突然、左chから音が出なくなったとか。
・緊張するなあ、、直せるかなあ、、??
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 YAMAHA CT-7000 ¥220,000(1976年頃)
・オーディオ懐古録 YAMAHA CT-7000 ¥220,000
・YAMAHA アンプ&チューナーカタログ 1975年11月版
・YAMAHA CT-7000専用カタログ 1975年9月版
■CT-7000の特徴(専用カタログから抜粋)-------------------------------
【7連バリコンとデュアルゲートMOS型FET使用のフロントエンド】
FMフロントエンドに精密な周波数直線7連バリコンを採用し、アンテナ回路をダブルチューンにして、イメージ妨害、IF妨害、局発2ndハーモニックス妨害特性はSGで測定不可能な120dB以上の値が得られています。相互変調特性、強入力時のブロッキング特性などの多信号妨害特性を大幅に改善しました。またRF2段とミキサー段に高周波特性がすぐれ低雑音のデュアルゲートMOS型FETを3石使用して、クロスモジュレーションなどを減少させるとともに、実用感度2.0uV(IHF)を実現させています。またRF同調回路とミキサー段の位相特性を改善、強入力特性と同調周波数による感度・歪率・セパレーションなどの変化を抑えています。
【微分利得特性を改善したブロックセラミックフィルターと7段作動増幅器のFM IF回路】
低歪率特性と高選択度特性の両立を実現するために、微分利得偏差を±0.2dB以内に抑えたブロックセラミックフィルター(特許申請中)を新開発しました。このブロックセラミックフィルターは今までのセラミックフィルターの特性のバラツキを補正するために、それぞれのフィルター素子の入出力回路にL,C,Rを組合せ調整し、個々の素子の入出力インピーダンスのマッチングを取り、最も理想に近い優れたフィルター特性を持つものです。また定電流バイアス回路からなるIC使用の高利得7段作動増幅器の優れたリミッター特性と相まって、CT-7000のFM IF段は実行選択度85dB以上、キャプチュアーレシオ1.0dB以下、AM抑圧比60dB以上、SN比78dB以上という高性能となっています。
【さらに低歪率を実現する広帯域切換可能のダブルIF回路】
IFの帯域を2段階(NORMAL-WIDE)に切換えられるダブルIF回路を採用し、より低歪率を実現しています。IFの帯域を広帯域(WIDE)に切換えることにより、電界強度の強い局に対してより低歪率受信が可能となり、アンテナ入力のオーバーオールのセパレーションは400Hzで50dB以上、歪率は400HzでMONO、STEREOともに0.08%以下という低和率特性です。
【微分利得偏差を最小に抑えたリニアフェイズディスクリミネーター】
微分利得特性を改善したブロックセラミックフィルターと広帯域IF段の低歪率化に対応するため、微分利得特性を最小に抑えた広帯域リニアフェイズディスクリミネーターを開発しました。特性直視装置により1台1台の歪率を最小となるよう調整し、特性を安定に維持するため直結2段の定電流ドライブ回路を採用しています。
【ヤマハ独自のNFBスイッチング方式のMPX回路、サブキャリア発生回路にはPLLを採用】
MPX回路はヤマハ独自のスイッチング方式平均値復調回路に、オーディオアンプと同じようにNFB(負帰還)をかけた新方式(特許申請中)を採用しています。このためMPX回路での歪はステレオ信号発生器では測定不可能の優れた値となっています。またこの方式は従来のSCAフィルターが不要となり、SCAフィルタ―による特性劣化が無く、混変調歪の大幅な改善とともに高域のセパレーションが充分に確保され、歪感のない透明な音質が得られます。サブキャリア発生回路には、フェーズロックドループ(PLL)を採用し、入力パイロット信号に位相を同期させています。またスイッチング回路に送られる38kHzの信号はDuty比1の方形波であるため、極めて安定な動作と高セパレーション、低歪率、高SN比の復調が得られます。PLL回路にはコイル(L)やコンデンサー(C)による同調回路のような経年変化や温度変化などの影響がほとんどありません。
【ディエンファシスも兼ねたヤマハ独自のアクティブフィルター】
ヤマハ独自のアクティブローパスフィルターは、19kHzで60dB以上、38kHzでは80dB以上という優れた減衰特性を持ち、音質劣化を招くような要素をシャープにカットしています。またこのフィルターはディエンファシス回路も兼ね、周波数特性は50~10kHzでは±0.3dB、20~15kHzでは+0.5~-1.0dBという秀れた値を持ち、広域までクリアーな再生音が得られます。
【オーディオアンプ系も低歪率設計】
ローパスフィルターや可変出力端子アンプは3段直結、バッファアンプは定電流負荷のエミッタフォロアー回路からなり、オーディオアンプ系での歪は無視できる値にまで追求、高周波系の低歪率設計に対応してあくまでも低歪率特性の実現に最善を尽くしています。
【ヤマハ独自の同調機構とAFC/STATIONインジケーター】
同調機構には、ヤマハ独自の優れた方式が採用されています。この方式は歪率最小、セパレーション最大の最良の同調点を維持するために、FMフロントエンドにAFCをかけFMフロントエンドの周波数ドリフトを25±30℃で15kHz以内に抑えています。このAFC回路は正殿ノイズを利用し同調ツマミに手を触れて選局している間は自動的にキャンセルされるものです。このため強電界局に隣接した微弱な電波も確実に受信できるので、引込み現象などの心配がありません。さらにこのヤマハ独自の同調機構は、選局中に局と同調すればAFC/STATIONインジケーターが薄く点灯し、正確に同調を取りツマミから手を離すと明るく点灯して、AFCが動作中であることを表示するユニークで便利な機構です。
【ワイドで見やすいダイヤルスケール】
精密なダイヤルスケールは、フロントパネル面をフルに活用した超ワイドタイプで、250kHz等間隔の周波数直線目盛り、大型フライホイールを採用、精度高い回転メカニズムによりバックラッシュやガタがありません。カーソル式ダイヤル指針はスムーズに走行し正確な同調点を指示します。
【FMミューティング回路】
FM MPX回路の入力段と出力段とにミューティングを2重にかけ、不快な局間ノイズや離調・選局時の耳障りなショックノイズをすべてカットし、快適な選局を可能にしています。しかもミューティングレベルは可変で、フロントパネルにレベル調整ツマミを設け、受信する場所の電界強度に合わせて快適なミューティング効果が得られます。また選局時のノイズをカットする場合、電波の強い局のみを受信する場合というように応用が自在です。さらにパワースイッチON-OFF時に発生するショックノイズについても、特にFET使用のミューティング回路を設けてカットする万全の設計です。
【ダイナミックレンジの大きなSIGNALメーターと入力電波の質を表すS-Mメーター】
従来のSIGNALメーターは30dB以上の入力でメーター駆動回路が飽和してしまうため正確なメーター指示が困難でした。CT-7000ではメーター回路にAGCをかけ、アンテナ入力レベルに応じて100dBまでリニア―にメーターを振らせています。またS-M(シグナル マイナス マルチパス)メーターの新方式により受信している電波の質をモニターすることができます。
【メカニカルで斬新なデザイン】
通常の使用時、操作する必要のないコントロールスイッチ類をすべてシーリングパネル内に収納、確かな高性能とメカニカルさが見事に融合したヤマハならではのデザインです。ソフトなタッチフィーリングを持つプッシュスイッチ、フロントパネルとシーリングパネルは肉厚のアルミ板削り出し、キャビネットはもちろんキャスト―ル(栓)によるリアルウッド仕上げなど高性能と高度なデザイン感覚によって創り上げられた格調高いものです。
【付属回路】
・オートブレンド
・マルチパス検出端子
・2系統のFMアンテナ端子
・IF出力端子
・2系統の出力端子
・低歪率OTL方式のヘッドホンアンプ
・ダイヤル照明がON/OFFできるイルミネーションスイッチ
■動作確認------------------------------------------------------------
・サイズはCT-800とほぼ同じ、でも重量は13kgと大型アンプ並み。
・電源スイッチの位置が中央やや右側、ちょっと違和感あります。
・でも透過タイプの窓照明が数字と目盛りだけが浮かび上がってカッコいいです。
・シーリングパネルが気持ちよく開閉します。
・パネル内のスイッチやツマミはクスミも無く、プッシュ操作がとても軽快。
・指針と目盛りの周波数ズレは0.2MHz程度。
・Sメーター最大点とTメーター中点はほぼ一致する。
・同調時はAFCインジケーターが薄く点灯し、選局ツマミから指を離すと明るく点灯。
・STEREOインジケーター点灯。
・IF BAND切換OK、MUTING動作OK。
・固定/可変端子とも正常に音が出ています。
・マルチパスH端子、DET端子からも音が聞こえます。
・左chの音が出ないとのことでしたが、両chとも同レベルで出ています。
・ただ、ヘッドホン端子から音が出ていません。全くの無音状態です。
■内部確認------------------------------------------------------------
・ウッドケースを外してみると、予想外の「金属の塊」が出てきました。
・上面、底面ともに光沢ある金属製ケースで全面覆われています。
・金属の素材は何でしょう?ピカピカ光沢の金属なのでステンレス製か?
・全身金属骨格の「ターミネーター」が出現したような? そんな印象でした。
・上面:フロントエンド、IF回路、検波回路、MPX回路
・底面:コントロール回路
■修理記録:ヘッドホン端子から音が出ない------------------------------
・固定/可変端子とも正常に音が出ているのにヘッドホン端子からは無音。
・底面コントロール基板のヘッドホン回路を調査してみると、、
・ヘッドホン回路上は左右chとも正常に音が出ていました。
・不調原因はプリント配線とコネクタピンとの接触不良でした。
・プリント配線がヒビ割れている感じです。
・そこでヒビ割れ箇所をリード線で跨いで直結しました。
・これでヘッドホン端子から音が出るようになりました。
■修理記録:左chの音が出ない------------------------------------------
・上記ヘッドホン回路の修理を終えて基板を組み立てて再チェックしたところ、、
・何と!左chから音が出なくなりました。STEREOインジケーターも点灯しません。
・依頼者様からお聞きした不具合が今になって確認できました。
・さて、原因は何でしょう?
・CT-7000は基板間の接続がすべてコネクタを介した配線です。
・メンテナンスしやすい構造ですがコネクタ部分で接触不良が発生しているかも?
・コントロール基板を再度取り外し、コネクタ接点のピンを磨いてみました。
・慎重に組み立て直して再チェック。
・今度は左右chとも音が出ます。STEREOインジケーターも点灯。
・やはり原因は配線コネクタの接触不良ですね。
・これを受けて他の基板のコネクタ部分も接点のピンを磨きました。
■調整記録------------------------------------------------------------
【Tメーターバランス調整】
・電源オン
・電波を受信しない状態 → T301(上段コア)調整 → Tメーター中点
・電源オフ → Tメーター中点を確認
※電源オフ時に中点を示さない場合 → メーター裏側の調整ネジで機械的に調整
【FM OSC調整】
・コントロール基板 SM端子 → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・76MHz → Lo調整 → Sメーター最大
・90MHz → TCo調整 → Sメーター最大
【FM RF調整】
・コントロール基板 SM端子 → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・76MHz → LA,LR1,LR2,LR3,LR4,LR5調整 → Sメーター最大
・90MHz → TCA,TCR1,TCR2,TCR3,TCR4,TCR5調整 → Sメーター最大
・83MHz → IF調整 → Sメーター最大
【レシオ検波調整】
・固定出力端子 → Wavespectra接続
・IF BAND WIDE
・83MHz → T301(上段コア)調整 → Tメーター中点 ※確認のみ
・83MHz → T301(下段コア)調整 → 高調波歪最小
【VCO調整】
・MPX基板上のTP(19kHz) → 周波数カウンタ接続
・83MHz 無変調 → VR501調整 → 19kHz±20Hz
【ステレオ歪調整】
・固定出力端子 → Wavespectra接続
・IF BAND NORMAL
・83MHz ST信号 → VR201,VR202,TC201,TC202調整 → 高調波歪最小
・IF BAND WIDE
・83MHz ST信号 → VR203,VR204,TC203調整 → 高調波歪最小
【WIDEバランス調整】
・アンテナ入力なし
・上記ステレオ歪調整でTメーター中点がずれた場合 → T201調整 → 中点へ
【パイロットキャンセル調整】
・IF BAND NORMAL
・固定出力端子 → Wavespectra接続
・83MHz ST信号 → VR401調整 → 19kHz信号最小
・83MHz ST信号 → VR402調整 → 19kHz信号最小
【セパレーション調整】
・IF BAND NORMAL
・固定出力端子 → Wavespectra接続
・83MHz ST信号 → VR401調整 → Rch漏れ信号最小
・83MHz ST信号 → VR402調整 → Lch漏れ信号最小
【Outputレベル調整】
・IF BAND NORMAL
・固定出力端子 → Wavespectra接続
・83MHz ST信号 → VR403調整 → ※AC 0.6V
・83MHz ST信号 → VR404調整 → ※AC 0.6V
【セパレーション調整】
・IF BAND WIDE
・固定出力端子 → Wavespectra接続
・83MHz ST信号 → VR601調整 → 左右ch漏れ信号最小
【ミューティング調整】
・IF BAND NORMAL
・83MHz ST信号 → VR205調整 → MUTING作動位置へ
【Sメーター調整】
・IF BAND NORMAL
・83MHz ST信号 → VR701調整 → Sメーター調整
■試聴----------------------------------------------------------------
・サイズはCT-800とほぼ同じですが重量は13kg、大型アンプ並みの重さです。
・透過タイプの窓照明が数字と目盛りだけが浮かび上がってカッコいいです。
・シーリングパネルに収まったプッシュスイッチの感触が柔らかくてイイ感じ。
・回路的には目新しいものはありませんが、基本性能そのものが特別なんですね。