・2019年6月初め、アキュフェーズT-107の故障機が届きました。
・何だか不思議な挙動をするそうです。
・さて、直せるのか??
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 Accuphase T-107 ¥99,800(1985年7月発売)
・製品カタログ Accuphase T-107 ¥99,800
■動作確認------------------------------------------------------------
●依頼者様からお聞きした不具合状況
1) 数日間電源コードを抜いた後、電源コードを接続するとすべて正常に動作する。
2) ただ、稼働後10分程度で突然シグナルメーターが0になり音声出力がなくなる。
このとき周波数は表示されていて選局ボタンも利く
3) さらに時間が経過すると、周波数表示が消え、選局ボタンも利かなくなる
押したボタンとは別のボタンの赤インジケータが点く
4) 電源を落とし電源コードを抜き、数日間放置すると 1)の状態に戻る
1、2日程度では戻らない
●当方での確認状況
・電源コードとFMアンテナを接続して電源オン。
・周波数の数字が点灯しない。UP/DOWNボタンを押しても反応なし。
・これは教えていただいた症状(3)の状態ですね。
・この後電源コードを抜いて1週間放置、再度確認しましたが状況は同じでした。
・もう(1)の状態には戻らないようです。
■内部確認------------------------------------------------------------
・電源部電圧確認
・IC101(78M05) + 5.6V
・IC102(78M15) +14.8V
・IC106(TC9147BP) 42pin (VDD) +4.96V、電源OFF時 +2.2V
・電源電圧は良さそうですが、VT電圧が出ていない
・T-107の底面には点検口が無いので部品交換は面倒です。
・フロントパネルを外し、基板を裏返して配線を確認。
・iPadで写真を撮って手書きアプリでメモを書き込み。
■修理記録:部品交換など---------------------------------------------
・IC106(TC9147BP)の周辺で気になった電解コンデンサ、トランジスタ交換
・C116,117:470uF/6.3v → 470uF/25v
・C121:10uF/25v → 10uF/50v
・C122:2.2uF/35v → 2.2uF/50v
・C123:0.1uF/50v → 0.1uF/50v
・C124:1uF/50v → 1uF/50v
・C127:3.3uF/50v → 3.3uF/50v
・Q106:2SC2458/GR → 2SC1815/GR
・以上の部品を一気に交換して基板を組み直し通電確認 → 残念ながら効果なし。
■修理記録:X101水晶振動子交換-------------------------------------
・IC106:TC9147BP は SANSUI TU-S707Xでも使われています。
・TU-S707Xのサービスマニュアルに基準周波数の調整方法が記載されています。
・TC9147BP 36pin(TEST)~42pin(VDD) をショートする
・TC9147BP 24pin(O/5) 周波数カウンタ接続
・トリマコンデンサ調整 → 25.00kHz
・ところがTC9147BP 24pin で 25kHzが確認できません。
・周波数カウンターにでたらめな数値が表示されます。
・そこで横向きに設置されているX101(7.2MHz)に指で軽く触れたところ、、
・何と、T-107が突然動作し始めました。
・周波数表示が出現してFM放送を受信します。
・Sメーターが大きく振れてSTEREOランプ点灯、正常動作です。
・これで直ったのかな??と思ったら、、
・数分後にSメーターが振れなくなり音声出力が消える、、その後周波数表示も消える、、
・最初に依頼者様にお聞きした症状(1)~(4)がここで確認できました。
・こうなると X101(7.2MHz)の故障か、あるいはTC9147BP自体の故障か?
・部品取り機(SANSUI TU-S707X)の水晶発振子とTC9147BPを取り外す。
・まずは水晶発振子を T-107 に移植したところ、
・何と! T-107が正常動作を始めました。
・18時間連続動作、電源コードを抜いて48時間放置、その後の確認でもOKです。
・水晶発振子の故障は初体験です。
■調整記録------------------------------------------------------------
【本体設定】
・MUTING OFF
・FILTER OFF
【VT電圧】
・J138~GND DC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・76MHz → OSCコイル調整 → 3.0v
・90MHz → OSCトリマ調整 → 20.0v
【RF調整】
・76MHz 40dB → RFコイル調整 → Sメーター最大
・90MHz 40dB → RFトリマ調整 → Sメーター最大
・83MHz 40dB → IFT調整 → Sメーター最大
【検波調整】
・D8後方端子 電圧計セット
・83MHz 80dB → T2調整 → 0v ※T2を左右に回して0vの中間位置に設定
【IF GAIN調整】
・83MHz 80dB → VR1調整 → NORMAL/NARROWでSメーター振れ同じ
【SIGNAL METER調整】
・83MHz 20dB → VR2調整 → Sメーター= 20
・83MHz100dB → VR3調整 → Sメーター=100
【MUTING調整】
・MUTING ON
・83MHz 20dB → VR4調整 → MUTINGオン
【STEREO歪調整】
・音声出力をWavespectraで観察
・83MHz(ST,80dB)→ フロントエンド内IFT調整 → 高調波歪最小
【SEPARATION調整】
・音声出力をWaveSpectraで観測
・83MHz(R/L信号,1kHz 80dB)→ VR5調整 → もれ信号最小
■試聴---------------------------------------------------------------
・回路図やその他資料が入手できないのでちょっと苦戦しました。
・でもその分とても勉強になりました。
・シャンパンゴールドのフロントパネルがカッコイイです。
・メモリーボタンのサビがちょっぴり残念、、