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KENWOOD D-3300T 修理調整記録4

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 ・2018年1月初め、D-3300Tの故障機が届きました。
 ・某FM放送局でモニター用に使われていたものだそうです。
 ・これはある意味「由緒正しい」個体ですね。
 ・さて、作業内容をご報告します。

D3300t09

■製品情報------------------------------------------------------------

 ・オーディオ懐古録 KENWOOD D-3300T ¥140,000円(1986年)
 ・オーディオの足跡 KENWOOD D-3300T ¥140,000円(1986年発売)
 ・Tuner Information Center (T.I.C) KT-3300D(1987年 $525)※回路図あり
 ・取扱説明書 (国内版)

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■動作確認------------------------------------------------------------

 ・サイドウッド無し、側面を固定するネジ無し、底面の脚も無し。
 ・フロントパネルに白い番号シール、可変出力VRの目盛りに赤い目印シール。
 ・放送をモニターするため複数台のD-3300Tがラックに収まっていたのかな?
 ・放送局のモニタールームを妄想してしまいます。
 ・さて、アンテナ端子A に同軸ケーブルを接続して電源オン。
 ・表示部の文字数字が輝度劣化のため部分的に痩せて暗い。
 ・これは長期間に渡って同じ周波数を表示し続けていた証拠ですね。
 ・チューニングつまみの回転フィーリングがとても重い。
 ・もしかしたら回したことがほとんど無いのかも?
 ・地元FM局を受信しようとしたところ、
 ・オートチューニングでは局周波数をすべて素通りしてしまいます。
 ・Tuneメーター点灯しない、Signalメーターも点灯しない。
 ・RF切換 DIRECT / DISTANCE どちらでも受信しない。
 ・IF切換 WIDE / NARROW どちらも受信しない。
 ・マニュアル受信でも全く受信しない。
 ・Modulationを示す横バーが点灯しない。
 ・アンテナ端子B でも症状は同じ。
 ・REC CALトーンは一瞬音が出るがすぐに消える。
 ・これはなかなか手強そうです。

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■原因調査------------------------------------------------------------

【電源部】
 ・長期間通電したまま酷使されていたという事からまずは電源部のチェック。
 ・電解コンデンサの液漏れやパンクなど目視で分かる不具合は無さそう。
 ・電圧の異常値は見当たらない。

【フロントエンド、RF部】
 ・VT電圧OK
 ・OSC発振周波数OK。IF信号は出ている。

【FM同調点】検波回路基板(X86-1020-00 B/3)
 ・TP10~TP11  L12(X86-)調整 → 電圧変化なし
 ・TP16~TP17  L9 (X86-)調整 → 電圧変化なし
 ・LA1231N-11ピン:Vcc → 15.1V OK
 ・LA1231N- 1ピン:IF IN → 10.7MHzOK
 ・LA1231N- 6ピン:AF OUT → クアドラチュア検波出力なし
 ・LA1231N-13ピン:S METER → 電圧なし
 ・同調コイルL9の内部コンデンサ容量抜け、またはLA1231N自体の故障か?

D3300t40_2

■修理記録:検波回路基板(X8601020-00 B/3)交換-----------------------

 ・検波回路基板(X8601020-00 B/3)を取り外す。
 ・実はD-3300Tの検波回路基板はKT-1100D、KT-V990、KT-7020と同じものです。
 ・そこで部品取り用にKT-7020を入手し、検波回路基板をD-3300Tに移植してみました。
 ・するとフロントパネルの表示管にTメーターとSメーター表示が出現!
 ・LA1231N- 6ピン:AF OUT → クアドラチュア検波出力OK、下記検波調整もOK。
  ・TP10~TP11  L12(X86-)調整 → 電圧ゼロ
  ・TP16~TP17  L9 (X86-)調整 → 電圧ゼロ
 ・まずは一歩前進ですが、音声出力端子からは非常に歪っぽい音が出てきます。
 ・一方マルチパスH端子からは正常な受信音声が聴こえます。
 ・さて、次はノイズ源の捜索。

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■修理記録:ノイズフロアが異常に高い----------------------------------

 ・WaveSpectraで波形観察。
 ・マルチパスH端子からは正常な受信音が出ている。
 ・しかし音声出力端子からはノイズフロアが異常に高い音声が出てくる。
 ・REC CALトーンを出すと同様にノイズフロアが異常に高い。
 ・この現象の原因は電源系統のトランジスタか電解コンデンサの劣化か?
 ・まずは検波基板CN4-7ピンを辿って電解コンデンサ交換。
  ・C102 0.22uF/50V交換 → 効果なし
  ・C39 1uF/50V交換 → 効果なし
  ・C40,41 4.7uF/35V交換 → 当たり!
 ・原因は電源回路放熱板横にあるC40 4.7uF/35Vの劣化でした。
 ・音声出力端子、マルチパスH端子それぞれから正常な受信音が出るようになりました。

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■修理記録:STEREOランプが点灯しない-----------------------------------

 ・次なる問題はステレオ放送受信時に「STEREO」ランプが点灯しないこと。
 ・実際に聴感上もステレオ感がない。
 ・VCO調整を実施してもTP(VCO)に76kHzが出現しない。
 ・IC17(AN7418S)周辺の電解コンデンサ交換
 ・C126 0.47uF/50V交換 → 効果なし
 ・C127 0.22uF/50V交換 → 当り! STEREOランプ点灯
 ・C127が短絡していました。
 ・ついでにMPX回路の電解コンデンサをすべて交換。

D3300t50

■調整記録------------------------------------------------------------

【本体設定】
 ・IF BAND:WIDE
 ・RF SELECTOR:DISTANCE
 ・QUIETING CONTROL:NORMAL
 ※(X86),(X05),(X13):基板番号
【VT電圧】
 ・TP6~TP7 DC電圧計セット
 ・アンテナ入力なし
 ・76MHz →  L5(X05-)調整 → 3.0V±0.1V ※実測 3.2V
 ・90MHz → TC5(X05-)調整 →25.0V±0.1V ※実測25.8V
【検波調整】
 ・TP10~TP11 DC電圧計セット
 ・83MHz(無変調,80dBu)受信 → L12(X86-)調整 → 0.0V±10mV ※実測-0.51V
 ・TP16~TP17 DC電圧計セット
 ・83MHz(無変調,80dBu)受信 → L9 (X86-)調整 → 0.0V±10mV ※実測+0.48V
【RF調整】
 ・Multipath V端子 DC電圧計セット
 ・76MHz(1kHz,100%変調,40dBu)→ L1~4 (X05-)調整 → 電圧最大
 ・90MHz(1kHz,100%変調,40dBu)→ TC1~4(X05-)調整 → 電圧最大
【IFT調整】
 ・Multipath V端子 DC電圧計セット
 ・83MHz(1kHz,100%変調,30dBu)→ L10,L11,L22(X05-)調整 → 電圧最大
 ・83MHz(1kHz,100%変調,30dBu)→ L11(X86-)調整 → 電圧最大
【AUTO STOP調整】
 ・83MHz(19kHz信号,10%変調,14dBu)→ VR1(X86-)調整 → STEREOインジケータ点灯
【SIGNAL METER調整】
 ・(X13-)電源スイッチ後方の小さな基板
 ・83MHz(無変調,43dBu)→ VR3(X13)調整 → 7番目のドット(最上段)点灯
【TUNING METER調整】
 ・SELECTOR:MONO
 ・83MHz(10Hz,100%変調,80dBf) → VR2(X13)調整 → ※
  ※中央の縦白セグメント点灯、両側の赤縦セグメントの中点へ
【MPX VCO調整】
 ・TP15に周波数カウンタ接続
 ・83MHz(無変調,80dBf) → VR5(X05-)調整 → 76.00kHz±50Hz
【PILOT CANCEL調整1】
 ・音声出力をWavespectraで観察
 ・83MHz(19kHz信号,10%変調,80dBu)→ VR1(X05-)調整 → 19kHz信号最小
 ・左右chのバランス確認
【PILOT CANCEL調整2】
 ・83MHz(19kHz信号,10%変調,80dBu)→ L20(X05-)調整 → 19kHz信号最小
 ・左右chのバランス確認
【SUB CARRIER調整(38kHz)】
 ・音声出力をWavespectraで観察
 ・83MHz(SUB信号,1kHz,90%変調+19kHz信号,10%変調,80dBu)→
   → L19(X05-)調整 → Lchレベル最大
【歪調整1 DLLD】
 ・83MHz(MONO信号,1kHz,100%変調,80dBu)→ VR3(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整2 MONO】
 ・83MHz(MONO信号,1kHz,100%変調,80dBu)→ VR4(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整3 MONO】
 ・83MHz(MONO信号,1kHz,100%変調,80dBu)→ VR6(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整4 STEREO】
 ・83MHz(L信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR5(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整5 STEREO】
 ・83MHz(SUB信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR7(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整6】
 ・83MHz(MAIN信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR8(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整7】
 ・83MHz(L信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR9(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整8 NARROW】
 ・83MHz(MAIN信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR2(X86-)調整 → 歪率最小
【SEPARATION調整1 L】
 ・83MHz(R信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR4(X05-)調整 → Lchもれ最小
【SEPARATION調整2 R】
 ・83MHz(L信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR3(X05-)調整 → Rchもれ最小
【SEPARATION調整3 NARROW】
 ・IF BAND:NARROW
 ・83MHz(R信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR2(X05-)調整 → もれ最小
【DEVIATION調整】
 ・REC CAL オン → VR4(X13)調整 → 左から4番目のドットが点灯する位置

D3300t

■修理記録:オートチューニングで+0.1MHzズレる--------------------------

 ・上記調整方法で各部正常に調整できました。
 ・これで良し!と思って試聴を始めたところ思わぬ不具合発覚、、
 ・上り方向のオートチューニングではFM局周波数で正常に止まる。
 ・ところが下り方向では+0.1MHzズレた周波数で止まってしまう。
 ・メモリー選局すると検波調整はズレていない。
  ・TP10~TP11  L12(X86-)調整 → 正常
  ・TP16~TP17  L9 (X86-)調整 → 正常
 ・通電から1時間ほど経つと正常周波数で止まるようになる。
 ・コントロール部周辺の電解コンデンサー交換するも効果なし。
 ・この原因がよく分かりません。
 ・FM局をメモリーに登録し、メモリー選局すれば正常に使えます。

■試聴----------------------------------------------------------------

 ・かなり時間がかかりましたが、FM放送を受信できるようになりました。
 ・再調整によって良い音が出ています。
 ・ただ、かなり劣化した表示部とオートチューニングの件がちょっと残念です。

D3300t08

■おまけ:D-3300TとKT-7020の基板比較----------------------------------

 ・検波回路基板と歪補正回路基板を並べてみました。
 ・検波回路基板は両者ほぼ同じ。
 ・歪補正回路を比べるとKT-7020は省略型。
 ・ただ基板は同じなので、部品を追加すればD-3300T同等の回路を作れるかも?

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