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KENWOOD D-3300T 修理調整記録3

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 ・2016年9月、D-3300Tの修理調整作業をお引き受けしました。
 ・「正常に受信するが、出てくる音が歪っぽい」という症状です。
 ・調べたところ不調原因はMPX回路のIC17:AN7418Sの故障らしい。
 ・ところが交換用部品が見つからず、捜索開始から1年以上経過。
 ・最近になってようやくAN7418Sを入手できたので再開しました。
 ・以下、作業記録です。

3300d07

■製品情報------------------------------------------------------------

 ・オーディオ懐古録 KENWOOD D-3300T ¥140,000円(1986年)
 ・オーディオの足跡 KENWOOD D-3300T ¥140,000円(1986年発売)
 ・Tuner Information Center (T.I.C) KT-3300D(1987年 $525)※回路図あり
 ・取扱説明書 (国内版)

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■動作確認------------------------------------------------------------

 ・外観は光沢ツヤがあってとても綺麗、新品みたいな状態です。
 ・フロントパネル、ボディ、サイドウッドともにキズが見当たりません。
 ・さて、アンテナ端子A に同軸ケーブルを接続して電源オン。
 ・表示部は明るく点灯。輝度劣化や文字痩せは感じません。
 ・地元FM局を受信しながら点検。
 ・オートチューニングで名古屋地区のFM局を正常受信。
 ・IF BAND切替(WIDE/NARROW)切替OK。MUTING動作OK。
 ・ステレオランプ点灯。REC CAL信号OK。
 ・プリセットメモリや他のスイッチで接触不良(タクトスイッチ不良)なし。
 ・ご指摘の症状の内、受信感度が低いとは特に感じませんでした。
 ・音が歪っぽいと感じる点は同感です。
 ・信号発生器から基準音を送信、Wavespectraで確認してみました。
 ・モノラル受信では正常です。
 ・ところがステレオ受信では酷い高調波が出ています。
 ・これはMPX回路に故障箇所がありそうです。

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■調整記録:前半--------------------------------------------------------

 ・まずは一通り受信調整しようと試みました。
【本体設定】
 ・IF BAND:WIDE
 ・RF SELECTOR:DISTANCE
 ・QUIETING CONTROL:NORMAL
【VT電圧】
 ・TP6~TP7 DC電圧計セット
 ・アンテナ入力なし
 ・76MHz →  L5(X05-)調整 → 3.0V±0.1V
 ・90MHz → TC5(X05-)調整 →25.0V±0.1V
【検波調整】
 ・TP10~TP11 DC電圧計セット
 ・83MHz(無変調,80dBu)受信 → L12(X86-)調整 → 0.0V±10mV
 ・TP16~TP17 DC電圧計セット
 ・83MHz(無変調,80dBu)受信 → L9 (X86-)調整 → 0.0V±10mV
【RF調整】
 ・Multipath V端子 DC電圧計セット
 ・76MHz(1kHz,100%変調,40dBu)→ L1~4 (X05-)調整 → 電圧最大
 ・90MHz(1kHz,100%変調,40dBu)→ TC1~4(X05-)調整 → 電圧最大
【IFT調整】
 ・Multipath V端子 DC電圧計セット
 ・83MHz(1kHz,100%変調,30dBu)→ L10,L11,L22(X05-)調整 → 電圧最大
 ・83MHz(1kHz,100%変調,30dBu)→ L11(X86-)調整 → 電圧最大
【AUTO STOP調整】
 ・83MHz(19kHz信号,10%変調,14dBu)→ VR1(X86-)調整 → STEREOランプ点灯
【SIGNAL METER調整】
 ・(X13-)電源スイッチ後方の小さな基板
 ・83MHz(無変調,43dBu)→ VR3(X13)調整 → 7番目のドット(最上段)点灯
【TUNING METER調整】
 ・SELECTOR:MONO
 ・83MHz(10Hz,100%変調,80dBf) → VR2(X13)調整 → ※
  ※中央の縦白セグメント点灯、両側の赤縦セグメントの中点へ
【MPX VCO調整】
 ・TP15に周波数カウンタ接続
 ・83MHz(無変調,80dBf) → VR5(X05-)調整 → 76.00kHz±50Hz

 ●ここで問題発生
 ●STEREOランプが点灯するものの分離度は20dB程度。ラジオ並み。
 ●WaveSpectraで波形を見ると高調波歪が酷い状況。

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 ●回路図確認しながら基板上で信号を追う。
 ●MPX回路の電解コンデンサ交換するも改善なし
  ・C126:0.47uF/50V、C127:0.22uF/50V、C128:1uF/50V、C135:100uF/10V、C136:100uF/10V
 ●怪しそうなICを交換するも改善なし
  ・IC21:4560D、IC22,23:5532DD、IC16:MC1495L
 ●こうなるとMPX回路 IC17:AN7418S(基板裏面に実装)が怪しい?
 ・AN7418Sデータシートを見ると「カーラジオ用IC」と書かれています。
 ・AN7418Sを捜索したところ、米イーベイで@8.95ドルの出品がありました。
 ・ただ日本への送料を加味するとちょっと躊躇いますね、、
 ・国内では見つからないし、さてどうしたものか??

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■修理記録:AN7418S交換-----------------------------------------------

 ・着手から1年以上経った2017年12月末、別件修理に必要な部品をヤフオクで落札。
 ・その出品者(業者)さんに問い合わせたところ、何とAN7418Sを手配可能とのこと!
 ・早速お願いして2018年1月末に入手することができました。
 ・金額的に高いか安いかは分かりませんが他に方法は無いので納得です。
 ・2018年1月、D-3300Tの作業を再開。
 ・IC17:AN7418Sはちょうどフレームの真下にあるのでこのままでは作業がやりにくい。
 ・シャーシを分解してフレームを外した方が良いです。
 ・慎重に作業を進めてAN7418Sを交換完了。
 ・電源オン、きれいなFM音声が聴こえてきました、、良かった、、
 ・もう一度最初から調整作業のやり直し。
 ・酷かった高調波歪が消えて本来のグッドサウンドが聴こえてきました。

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■調整記録:後半------------------------------------------------------

【MPX VCO調整】
 ・TP15に周波数カウンタ接続
 ・83MHz(無変調,80dBf) → VR5(X05-)調整 → 76.00kHz±50Hz
【PILOT CANCEL調整1】
 ・音声出力をWavespectraで観察
 ・83MHz(19kHz信号,10%変調,80dBu)→ VR1(X05-)調整 → 19kHz信号最小
 ・左右chのバランス確認
【PILOT CANCEL調整2】
 ・83MHz(19kHz信号,10%変調,80dBu)→ L20(X05-)調整 → 19kHz信号最小
 ・左右chのバランス確認
【SUB CARRIER調整(38kHz)】
 ・音声出力をWavespectraで観察
 ・83MHz(SUB信号,1kHz,90%変調+19kHz信号,10%変調,80dBu)→
   → L19(X05-)調整 → Lchレベル最大
【歪調整1 DLLD】
 ・83MHz(MONO信号,1kHz,100%変調,80dBu)→ VR3(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整2 MONO】
 ・83MHz(MONO信号,1kHz,100%変調,80dBu)→ VR4(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整3 MONO】
 ・83MHz(MONO信号,1kHz,100%変調,80dBu)→ VR6(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整4 STEREO】
 ・83MHz(L信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR5(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整5 STEREO】
 ・83MHz(SUB信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR7(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整6】
 ・83MHz(MAIN信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR8(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整7】
 ・83MHz(L信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR9(X86-)調整 → 歪率最小
【歪調整8 NARROW】
 ・83MHz(MAIN信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR2(X86-)調整 → 歪率最小
【SEPARATION調整1 L】
 ・83MHz(R信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR4(X05-)調整 → Lchもれ最小
【SEPARATION調整2 R】
 ・83MHz(L信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR3(X05-)調整 → Rchもれ最小
【SEPARATION調整3 NARROW】
 ・IF BAND:NARROW
 ・83MHz(R信号,1kHz,90%変調+19kHz信号10%変調,80dBu)→ VR2(X05-)調整 → もれ最小
【DEVIATION調整】
 ・REC CAL オン → VR4(X13)調整 → 左から4番目のドットが点灯する位置

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■試聴----------------------------------------------------------------

 ・再調整によって本来の性能を取り戻したと思います。
 ・着手から1年5ヶ月、修理に要した時間の最長記録を更新しました(笑)

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