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KENWOOD L-02T

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 ・2017年10月、KENWOOD L-02Tの修理調整作業を承りました。
 ・1981年発売当時の定価30万円の超高級チューナーです。
 ・大卒初任給が10万円くらいだった頃ですから何と「給料3ヶ月分」です。
 ・実際に内部を見るのは初めてなのでとても勉強になりました。
 ・以下、作業記録です。

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■製品情報-----------------------------------------------------------

 ・オーディオ懐古録 KENWOOD L-02T FM STEREO TUNER \300,000
 ・オーディオの足跡 KENWOOD L-02T \300,000(1982年頃)
 ・Hifi Engine Kenwood L-02T FM Stereo Tuner (1982-83)
 ・KENWOOD L-02T 取扱説明書(日本語版、PDF形式)

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■特長(取扱説明書より抜粋)-----------------------------------------

 FMチューナーでは、妨害電波を排除し受信したい放送電波だけを如何に正確に受信するか、という受信機としての基本性能と、オーディオ機器の一つとして如何に忠実に放送信号を再生し音質の良さを保つか、の相反する二つの性質をバランスよく設計しなければなりません。つまり、従来は音質の良さを中心に設計しますと混信などにより受信性能が悪くなり、逆に受信性能を中心にしますとオーディオ性能が得られにくいのが常でした。L-02Tでは以下に述べる画期的な技術を駆使することにより、この両性能の両立が達成されています。

混変調歪や大入力特性に優れた性能を持つダイレクトコンバージョンシステムを搭載したRFセレクター
 放送局の増加とともに、二信号による妨害(RF相互変調)や近接大入力局による妨害(混変調歪や感度の低下)が受信感度やイメージ妨害などの一信号特性よりも重視されてきます。本機ではこれらの対策として、入力信号をRF増幅部へ通さず直接ミキサー段へ入れるダイレクトコンバージョンシステムを採用(RFセレクターの DIRECT の位置)し、強電界地域では優れた音質が得られます。また、高感度が要求される遠距離局受信用の位置も併設(RFセレクターの NORMAL の位置)し、RFセレクターで受信する局の状態に応じた選択をすることができます。

ノンスペクトラムIFシステム ― 無歪IF回路
 IF段はFMチューナーでの歪発生の根源です。IF回路は目的の電波だけを通過させ、他の電波を排除するバンドパス特性回路です。故に今までのIF回路ではどんなに良い設計をしても、これにある帯域幅を持つFM信号が通過しますとどうしても信号が変形されて歪を発生していました。本機に採用のノンスペクトラムIFシステムは、バンドパスフィルターを通過させるFM信号を、あらかじめ変調幅を持たないノンスペクトラム波に変換し、十分な選択度を確保してから元のFM信号に戻すという画期的なシステムです。
 これにより高調波ひずみ率は0.004%(MONO、1kHz、WIDE)と、今までのものとは一桁違う(当社比)スペックが得られました。

ノンステップ サンプリングホールドMPX
 ダイレクトコンバージョンRF、ノンスペクトラムIFシステムと、当社オリジナル回路の開発により、極限ともいえる忠実コンポジット信号を得た本機では、ステレオ復調部にもメスを入れました。
 L-01Tに採用して音質の良さと性能では既に定評があるサンプリングホールドMPXをさらに改善し、キャリアリークフィルター無しでキャリアケージは実に60dB以上のスペックが得られています。本機では、キャリアリークを取るためのキャリアリークフィルターを通さずに、音質を損なうことなく直接ステレオ放送を楽しめます。

クリーンサブキャリア方式によるパイロットキャンセラー回路を採用、ビートディストーションを改善
 パイロットキャンセラー回路は、高域周波数特性、位相特性を犠牲にすることなく19kHzのパイロット信号を除去させることができますが、音質上の劣化をもたらすビートディストーションを悪化させる要因をもっています。
 本機では、クリーンサブキャリア方式の応用により、ビートディストーションを抑え音質の改善をはかっています。

完全同調を維持するサーボロックシステム
 チューナーとしての性能を最大限発揮するには、とらえた電波を確実にロック(固定)しておくことです。本機では、選局ツマミを回し同調後にツマミから手を離しますと、サーボロック回路が働き最良同調点にロックします。この状態では、温度や湿度変化による局部発振周波数の変動がなく、常に完全同調の状態を保つことができます。

Σ(シグマ)ドライブ オーディオ回路
 L-08C、L-08Mにて確立されたΣドライブ回路は、本機の出力信号(VARIABLE)の伝達を接続するプリアンプ部のTUNER端子まで正確に保証します。左右独立、±2電源によってバックアップされたオーディオ部からの出力信号は、出力コードによる性能劣化も無く、確実にプリアンプ入力となります。

■操作方法確認--------------------------------------------------------

 ・操作ボタンとインジケーターがたくさんあるので、まずは取扱説明書を読んで学習。
 ・アンテナ入力2系統(A/B)、固定出力(RCA)、可変出力(Σ)、マルチパス(H/V)。
 ・アンテナ切替(A/B)、RF切替(DIRECT/NORMAL)、IF BAND切替(WIDE/NARROW)。
 ・Tメーター目盛り → 離調周波数(100Hz,200Hz,300Hz,400Hz)が読み取れる。
 ・Sメーター目盛り → 電界強度110dBfまで読み取れる。上段:NORMAL、下段DIRECT。
 ・3つ目のメーターはデビエーションとマルチパスの切替式
 ・MUTINGはフロントパネル下のVRツマミによる連続可変式。作動点 → min 約25dBf、max 約70dBf。
 ・SERVO LOCK ON → 同調ズレがあっても正確な同調点に引き込む。
 ・SERVO LOCK インジケーターの動作
 ロックスイッチがONの状態で選局ツマミを回して希望局にダイヤル指針を合わせます。このとき、このインジケーターが点灯するようにツマミを調節してください。そして選局ツマミから手を離しますと、インジケーターはより明るく点灯し、FM受信が安定動作に移ったことを示します。
 ・LPF(ローパスフィルター)スイッチ → 38kHzサブキャリア除去(録音時のトラブル回避)
 ・REC CAL → 440Hz(FM50%変調)録音レベル調節
 ・QUIETING CONTROL / MONO   → モノラル受信
 ・QUIETING CONTROL / AUTO   → 電波強度に応じてL/Rのブレンド量を自動制御
 ・QUIETING CONTROL / STEREO → オートブレンド機能オフ、常に最大セパレーション確保
 ・チューニングスケール調整ネジ(本体左側面)→ ±2mmの範囲で指針位置を調整できる

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■動作確認-----------------------------------------------------------

 ・ボディサイズが予想以上に大きく重い。W480mm×D423mm、12.4kg。
 ・外観はほぼ無傷。アルミ製天板に光沢があってとても美しい。
 ・電源ケーブルは他のKENWOOD/TRIO製品と同じ。
 ・極太ケーブルとかインレット式とか、もう少し高級感があっても良かったのに、、残念、
 ・さて、アンテナA端子に75Ω同軸ケーブルを接続して電源オン。
 ・三つのメーターの照明点灯。指針だけが赤く浮かび上がる。周波数窓の照明無し。
 ・各種機能の動作状態を示す赤いインジケータ点灯。
 ・SERVO LOCK ON の状態で名古屋地区のFM局を受信するため操作してみる。
 ・選局ツマミを回して局周波数に近づくと SERVO LOCKインジケーターが薄く点灯。
 ・Tメーターで中点に合わせた後、ツマミから手を離すと同インジケーターが明るく点灯。
 ・82.5MHzの局周波数に対して指針位置82.6MHzで受信。
 ・STEREOインジケーター点灯、固定出力(RCA)端子からステレオ音が流れる。
 ・Sメーター目盛りが示す電界強度:LOCAL=約75dBf、NORMAL=約75dBf
 ・我が家のFM電界強度をほぼ正確に表示している。
 ・デビエーション/マルチパスメーターもそれなりに振れている。
 ・RF切替、IF BAND切替OK。MUTING作動OK。調整VRによるMUTINGレベル変化あり。
 ・QUIETING CONTROL MONO → モノラル受信OK。
 ・QUIETING CONTROL AUTO/STEREO → STREOランプ点灯。聴感上の違いが分からない。
 ・REC CALトーンOK。LPFスイッチによる効果は聴感上は分からない。
 ・短時間の動作確認では問題なさそうな感じです。
 ・Σ回路は未確認。

■不具合情報:SERVO LOCK インジケーターの点灯動作---------------------

<依頼者様からお聞きした不具合状況>
 ・同調時にサーボロックランプが薄く点灯する。
 ・その後、手を離しても薄く点灯したままで明るくならない。
 ・ボディを軽く叩くと明るく点灯する。
<本来の動作>
 ・取扱説明書の記載によると、
 ・ロックスイッチONの状態で選局ツマミを回して希望局にダイヤル指針を合わせる。
 ・希望局に同調すると SERVO LOCKインジケーターが薄く点灯する。
 ・この状態で選局ツマミから手を離すとインジケーターはより明るく点灯する。
 ・これはFM受信が安定動作に移ったことを示す。
<私の環境で確認した不具合状況>
 ・最初は問題なしと思いましたが、長時間使っていると次の不具合を確認しました。
 ・同調時にサーボロックランプが薄く点灯する。
 ・手を離すとより明るく点灯する。これは正常動作。
 ・ところがこの状態でしばらく使っていると、いつの間にか「薄点灯」になっている。
 ・ツマミに触れても点灯状態に変化なし。
 ・一旦離調して再度同調しても、薄く点灯するだけで手を離しても明るい点灯にならない。
 ・サーボロック回路に不具合がありそう?

■内部確認-----------------------------------------------------------

 ・天板は2枚構成。スライド式で後方へずらして外す。天板も側板も豪華なアルミ板。
 ・底板にKENWOODサービスの修理記録シールが2枚ありました。
 ・X00-2190-00:電源回路
 ・X01-1320-00:FM専用7連バリコン搭載フロントエンド
 ・X02-1210-00:IF回路基板
 ・X04-1150-00:MPX回路基板
 ・X13-3650-00:AF回路基板

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■修理記録1------------------------------------------------------------

 ・回路図を見ながらサーボロック関係の回路がある [X13-3650-0000] 基板を調査。
 ・IC5-7ピン電圧 → 通常7.4V 、ツマミにタッチすると-0.68V
 ・薄点灯状態では 7.4V → タッチを感知していない?
 ・IC5-5ピン電圧(規定値1.2V)→ 通常0.9V 、ツマミにタッチすると0.75V
 ・規定値1.2Vに対して実測0.9Vは低すぎるか?
 ・L1コイル調整(時計回り2回転) → 0.9V → 1.1V
 ・この状態で動作確認中。

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■調整記録-----------------------------------------------------------

【セッティング】
 ・QUIETING:AUTO
 ・IF BAND:WIDE
 ・REC CAL:OFF
 ・LPF:OFF
 ・MUTING:OFF
 ・ANT ATT:dB
 ・DE-EMPHASIS:NORMAL
【Sメーター調整 (1)】
 ・83MHz,60dBu,Dev0 → IF基板 L15調整 → Sメーター最大
【Tメーター調整 (1)】
 ・83MHz,60dBu,Dev0 → IF基板 L12調整 → Tメーター中点
【トラッキング調整】
 ・76kHz,40dBu,Dev0 → FE基板 L1,L2,L3,L4,L5,L6,L13調整 → Sメーター最大
 ・90kHz,40dBu,Dev0 → FE基板 TC1,TC2,TC3,TC4,TC5,TC6調整 → Sメーター最大
 ・数回繰り返す
【Tメーター調整 (2)】
 ・IF BAND:NARROW
 ・電波無し、指針83MHz位置 → IF基板 L7調整 → Tメーター中点
【Sメーター調整 (2),(3)】
 ・IF BAND:NARROW
 ・RF SELECTOR:DIRECT
 ・83MHz,45dBu,Dev0 → IF基板 VR2調整 → Sメーター 50dBf
 ・83MHz,65dBu,Dev0 → IF基板 VR4調整 → Sメーター 70dBf
 ・数回繰り返す
【Sメーター調整 (4)】
 ・83MHz,65dBu,Dev0 → IF基板 VR3調整 → Sメーター 70dBf
 ・数回繰り返す
【REC CAL調整】
・REC CAL:ON
・固定出力端子にAC電圧計セット → MPX基板 VR5調整 → -6dB
・430Hz
【VCO調整】
 ・83MHz,80dBu,Dev0,Pilot → MPX基板 VR1調整 → STEREOランプが点灯する範囲の中間
【Pilotキャンセル調整】
・固定出力端子にSpaceSpectra接続
 ・83MHz,80dBu,Dev0,Pilot → MPX基板 VR2,L1調整 → 19kHz成分最小
【オフセット(OFS)調整】
・IC10-7pin ~ GND DC電圧計セット
 ・83MHz,60dBu,Dev0,Pilot → MPX基板 VR3 調整(Lch) → 0v ※実測+30mV
・IC19-7pin ~ GND DC電圧計セット
 ・83MHz,60dBu,Dev0,Pilot → MPX基板 VR4 調整(Rch) → 0v ※実測ー22mV
【マルチパスメーター調整】
 ・38kHz AM変調10%
 ・83MHz,60dBu,38kHz AM Dev10% → MPX基板 L16,L17,L18 調整 → マルチパスメーター最大
【歪調整(MONO)】
 ・83MHz,80dBu,1kHz±75kHz → IF基板 L1,L2,L3,L4,L5 → 高調波歪最小
【歪調整(STEREO WIDE)】
 ・83MHz,80dBu,1kHz±68.25kHz,SUB信号 → IF基板 L32(色なし) → 高調波歪最小
【歪調整(STEREO NARROW)】
 ・IF BAND:NARROW
 ・83MHz,80dBu,1kHz±68.25kHz,SUB信号 → IF基板 L34(色なし) → 高調波歪最小
【セパレーション調整(WIDE)】
 ・IF BAND:WIDE
 ・83MHz,80dBu,1kHz±75kHz,R信号 → IF基板 VR8 →  Lch 最小
 ・83MHz,80dBu,1kHz±75kHz,L信号 → IF基板 VR10 → Rch 最小
【セパレーション調整(NARROW)】
 ・IF BAND:NARROW
 ・83MHz,80dBu,1kHz±75kHz,R信号 → IF基板 VR9 →  Lch 最小
 ・83MHz,80dBu,1kHz±75kHz,L信号 → IF基板 VR11 → Rch 最小
【SCA調整】
 ・DARC信号を入れて音声出力波形を確認 → 影響なし
 ・VR6(Lch),VR7(Rch)ノータッチ

L02t

■試聴---------------------------------------------------------------

 ・サーボロックランプの点灯は正常になったようです。
 ・しばらく動作確認を続けましたが今のところ不具合は再発しません。
 ・ただ根本的な原因が他にあるのかもしれません。
 ・この状態でお返ししますので引き続きご確認ください。

Kenwood_l02t18


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