・2016年8月、YAMAHA T-2の修理調整作業を承りました。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオ懐古録 YAMAHA T-2 \130,000
・オーディオの足跡 YAMAHA T-2 \130,000(1978年頃)
・Hifi Engine YAMAHA T-2 (1978-81) ※サービスマニュアル入手可能
・取扱説明書 YAMAHAホームページのダウンロードサイトで入手可能
■動作確認------------------------------------------------------------
・外観に目立つキズは無く、状態はなかなか良いです。
・電源スイッチオン。指針とメーター照明点灯。
・赤く光るダイヤル指針とデジタル表示はピッタリ一致しています。
・IFバンド切替、MUTING動作、REC CALなど操作ボタンは問題なさそう。
・固定出力、可変出力とも正常。マルチパスH端子から受信音が聴こえます。
・基本動作に問題は無さそう、、、と思ったら、、
・依頼者様から事前にご指摘いただいた症状を確認しました。
1. 10~30分ほど経過すると、2~3分出力が途切れる。
2. 放置しておくといつの間にか回復する。
3. しばらくするとまた音が出なくなる。
・音が出ないときの症状は、
・周波数のデジタル表示が消失。
・このときSメーターは正常、Tメーターが中点をやや外れる。
・固定/可変端子とも音が出ないが、マルチパスH端子からはきれいな音が出る。
・MUTINGスイッチのON/OFF効果なし。REC CAL信号も出ない。
・しばらくすると正常動作に戻る。
■修理記録:ハンダクラック補修----------------------------------------
・基板を確認する過程で電源回路TR240,TR241(2SD476)にハンダクラック発見。
・これを補修したところ60Hzに出ていたピーク波形が消滅しました。
・ただ、この状態でも上記不具合が発生したので原因は別にありです。
・実は当初、電源回路の回路図を見てヒューズ抵抗 FR201(150mA,10Ω)の劣化を疑いました。
・ヒューズ抵抗が劣化してノイズ源化している事例(YAMAHA CR-600)が最近あったからです。
・そう思って基板で電源回路を確認したところ、、
・回路図に記載のあるFR201が実装されていません。
・該当位置と思われるところはジャンパ線でした。
■調整記録------------------------------------------------------------
・とりあえず正常動作している状態で各部調整してみました。
【機能設定】
・フロントパネルスイッチ設定
・RF MODE=HI SENSITIVITY
・IF MODE=LOCAL
・AUTO BLEND=OFF
【同調点調整】
・SSGより10.7MHz注入 → T201上段コア調整 → Tメーター中点
【OSC調整】
・指針を83MHzにセット
・83MHz 変調オフ 70dB → フロントエンド OSCトリマ調整
【トラッキング調整】
・76MHz mono 1kHz 50dB → RFコイル調整 → Sメーター最大
・90MHz mono 1kHz 50dB → RFトリマ調整 → Sメーター最大
【検波歪調整】
・音声出力端子 → WaveSpectra
・83MHz mono 1kHz 60dB → T201下段コア調整 → 歪み最小
・83MHz mono 1kHz 60dB → VR203調整 → 歪み最小
【VCO調整】
・TP 19kHz に周波数カウンタ接続
・83MHz 無変調 60dB → VR204調整 → 19kHz±20Hz
【PLL調整】
・音声出力端子 → WaveSpectra
・83MHz stereo 1kHz L-R 60dB → T202調整 → Lch音声レベル最大
【ステレオ歪調整1】
・IF MODE=LOCAL
・音声出力端子 → WaveSpectra
・83MHz stereo 1kHz 60dB → VR201,CF201調整 → 歪み最小
・83MHz stereo 1kHz 60dB → VR202,CF204調整 → 歪み最小
【ステレオ歪調整2】
・IF MODE=DX
・音声出力端子 → WaveSpectra
・83MHz stereo 1kHz 60dB → CF202,CF203調整 → Sメーター最大、歪み最小
【パイロットキャンセル歪調整】
・音声出力端子 → WaveSpectra
・83MHz stereo 1kHz 60dB → VR205,T203調整 → 19kHz漏れ信号最小
【セパレーション調整】
・音声出力端子 → WaveSpectra
・83MHz stereo 1kHz 60dB → 別基板VR402調整 → セパレーション調整
・83MHz stereo 1kHz 60dB → 別基板VR401調整 → 左右同レベル
【Sメーター調整】
・83MHz 無変調 80dB → VR206調整 → Sメーター振れ調整
【REC CAL調整】
・REC CALスイッチオン → Tメーターが中点を示すことを確認
●ここまで調整が終わって試聴しているときに突然音途切れ症状発生。
・このときPOSTアンプ入口では左右chとも正常な音声が出ている。
・ところがPOSTアンプ出口では左右chとも音が出ない。
・つまり意図しないのにMUTINGが作動した状態です。
・稀に音が出るときはヒドイ雑音が混じる。
・これはステレオ受信時も左右chとも同じ現象。
・左右ch共通の症状から考えられる原因は2点。
※POSTアンプに供給されるMUTING信号の異常。
※あるいはPOSTアンプ基板に供給される電源(+13V,-13V)の異常。
■修理記録:MUTING/OTS回路トランジスタ交換----------------------------
・TR223,226,227,228(2SA844) → 2SA1015、、効果なし
・TR224,225(2SC1918) → 2SC1815、、、効果なし
・TR217(2SA844) → 2SA1015、、効果なし
・TR215,216,218(2SC1918) → 2SC1815、、、効果なし
・MUTING回路自体に異常は無さそうです。
■修理記録:電源回路トランジスタ交換----------------------------------
・こうなると残るは電源回路のTR245(2SB544)が怪しいか?
・TR245のコレクタ電圧を確認すると+9V~-5V辺りで不安定です。
・-5VでMUTING解除、+7V以上でMUTING動作。故障部品はこれですね。
・応急処置として基板だけ保管しているYAMAHA T-4 電源基板から 2SB544 移植。
・MUTING動作時のTR245コレクタ電圧変化が明確になって動作安定。
・交換して1週間の動作確認で問題ありません。
■試聴----------------------------------------------------------------
・短期間の確認ですがたぶん不具合は解消できたと思います。
・この状態でお返ししますので依頼者様の下で動作確認をお願いします。
・もし不具合が再発するようであれば、再度ご連絡ください。