・2016年5月、KT-1010Fの修理調整作業をお引き受けしました。
・オート選局でチューニングできない状態だそうです。
・以下、作業記録です。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオの足跡 KENWOOD KT-1010F \59,800(1985年発売)
■動作確認------------------------------------------------------------
・電源コードの印字「1986」。
・表示部は明るく点灯し、文字欠けや文字痩せなし。
・オート選局でサーチ開始すると地元FM局周波数を見事に素通り。
・マニュアル選局に切り換えるとFM局を受信しました。
・ただしTメーター表示が中点から右に1本ズレる。
・この状態でオートに切り換えてもSTEREOランプ点灯せず。
・FM同調点がズレている感じです。
・AMは不具合無さそう。
■調整記録------------------------------------------------------------
【本体設定】
・RF SELECTOR=DISTANCE
・IF BAND=WIDE
・QUIETING CONTROL=NORMAL(右端)
【FM VT電圧】
・TP3~TP4 DC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・76MHz → L8調整 → 実測 3.0V ※確認のみ
・90MHz → TC6調整 → 実測25.2V ※確認のみ
【FM同調点調整】
・TP10~TP11 DC電圧計セット
・83MHz(無変調 80dB)受信 → T2調整 → 0.0V ※実5.2v
※T2調整ベスト値=3.1v ※0vに設定できません。
※同調ズレの原因はT2の容量抜けのようです。
■修理記録:検波用同調コイル交換--------------------------------------
・T2はLA1231Nのクアドラチュア検波同調コイルです。
・部品取り用に保管していたKENWOODのKT-5020基板からL19を移植しました。
・これでTP10~TP11 間の電圧がゼロに調整できました。
・これによってTメーターがピタッと中点で点灯しました。
■調整記録(続き)----------------------------------------------------
【FM同調点調整】
・TP10~TP11 DC電圧計セット
・83MHz(無変調 80dB)受信 → T2調整 → 0.0V
【RF調整】
・R73右足(Sメーター代用)DC電圧計セット
・83MHz(無変調 40dB)→ L1,L2,L4調整 → 電圧最大
・83MHz(無変調 40dB)→ T1 → 電圧最大
※L1,L2の調整は難しいのでノータッチ
【PLL検波調整】
・TP12~TP13 DC電圧計セット
・83MHz(無変調 80dB)受信 → L14調整 → 0.0V
・83MHz(1kHz 100% 80dB)受信 → T3調整 → 歪最小
【MPX VCO調整】
・TP15に周波数カウンタ接続
・83MHz(無変調,80dB) → VR8調整 → 19kHz
【SUB CARRIER調整(38kHz)】
・音声出力をWavespectraで観察
・83MHz(SUB信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ L20調整 → Lchレベル最大
【歪調整1 DET】IF=WIDE
・83MHz(MONO信号,400Hz,100%変調,80dB)→ VR2調整 → 歪調整
【歪調整2 MONO2】IF=WIDE
・83MHz(MONO信号,1kHz,100%変調,80dB)→ VR3調整 → 二次歪調整
【歪調整3 MONO3】IF=WIDE
・83MHz(MONO信号,1kHz,100%変調,80dB)→ VR6調整 → 三次歪調整
【歪調整4 L/R2】IF=WIDE
・83MHz(L信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR4調整 → 二次歪調整
【歪調整5 STEREO/SUB3】IF=WIDE
・83MHz(SUB信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR5調整 → 三次歪調整
【歪調整6 STEREO/Narrow】IF=NARROW
・83MHz(MAIN信号,1kHz90%変調+19kHz10%変調,80dB)→ VR7調整 → 歪調整
【セパレーション調整】
・IF=WIDE
・83MHz(STEREO信号,80dB)→ VR10調整 → Rch漏れ最小
・83MHz(STEREO信号,80dB)→ VR11調整 → Lch漏れ最小
・IF=NARROW
・83MHz(STEREO信号,80dB)→ VR9調整 → 両ch漏れ最小
【REC CAL】
・392Hz ※確認のみ
【AM VT電圧】
・TP3~TP4 DC電圧計セット
・アンテナ入力なし
・522kHz → L16調整 → 実測 1.5V ※確認のみ
・1629kHz→ TC2調整 → 実測 8.1V ※確認のみ
【AM RF調整】
・729kHz(NHK)受信 → L18調整 → 最大
・1332kHz(東海ラジオ)受信 → TC3 → 最大
■試聴----------------------------------------------------------------
・QUIETING CONTROL 通常はNORMAL(右端)※ステレオ受信時のブレンド量を調整
・QUIETING CONTROL DISTANCE(左端)にするとブレンド量100%,つまりMONO受信となる
・RF SELECTOR 通常はDISTANCE ※電波が強すぎる場合はDIRECT
・SENS.LEVEL High/Low ※ミューティングレベル切替
・再調整によって良い性能を取り戻したと思います。