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PIONEER F-717

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 ・2015年11月、部品取り用に PIONEER F-717 動作未確認機(2号機)を入手しました。
 ・実は当時、同型 F-717故障機(1号機)の修理作業を進めていました。
 ・修理用の部品を調達するためにこの2号機を手に入れました。
 ・部品取りの前に動作確認のため一通り調整したところ、、
 ・何と正常動作品になりました。
 ・以下の文章は、1号機と2号機の作業記録を合体したメモです。

Pioneer_f71706

■製品情報------------------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 PIONEER F-717 ¥59,800(1987年発売)
 ・オーディオ懐古録 PIONEER F-717 ¥59,800(1987年発売)
 ・Hifi Engine PIONEER F-91 輸出機のサービスマニュアルあり

Pioneer_f71702Pioneer_f71711

■動作確認------------------------------------------------------------

 ・正面パネルやボディに目立つキズはないものの全体に汚れた感じです。
 ・電源コードの印字:1978
 ・FM用75Ω端子はA/Bの2系統。
 ・FMアンテナA端子に同軸ケーブルを接続して電源オン。
 ・蛍光表示部は正常に点灯。文字痩せ、文字欠け無く輝度も十分。
 ・オートチューニングでは名古屋地区のFM局の周波数で正常に停止します。
 ・Sメーターのレベル表示OK。STEREOランプ点灯。MUTING動作OK。
 ・手持ちの適当なAMループアンテナを接続してAMチェック。
 ・AM局もSメーターが振り切れる状態で受信OK。
 ・動作未確認機でしたがFM/AMとも受信できました。

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■内部確認------------------------------------------------------------

 ・基板上にシールドケースが並んでいます。
 ・ハンダ付けされたシールドケースのフタを外してみました。
 ・振動対策でしょうか、ケース内部はホットボンドが充填されています。
 ・それからPIONEERオリジナルIC PA5008が3個も配置されています。
 ・海外版SMの調整要領には記載されていないVRやコイルが多数あります。
 ・複雑な回路なので実機と回路図で勉強しました。

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 ・IC102 PA5008 IF AMP
 ・IC108 PA5008 IF CONTROL & DET
 ・IC201 PA5008 DDD
 ・IC202 PA5007 DDD
 ・VR101 MONO DIST ADJ
 ・VR102 S-METER
 ・VR103 MUTING
 ・VR104 S-MTERE
 ・VR106 NARROW DIST
 ・VR107 MONO DIST ADJ
 ・T103a IC108/PA5008 DET
 ・T103b IC108/PA5008 DIST
 ・VR201 ONLY DIST
 ・VR202 MONO DIST
 ・VR203 DC BALANCE
 ・VR204 L-R SEPARATION
 ・VR205 R-L SEPARATION
 ・VR206 38kHz ADJ
 ・VR207 PILOT ADJ
 ・VR208 L-R SEPARATION
 ・VR209 R-L SEPARATION

Pioneer_f91_sche

■回路研究 ARTS:Active Real Time Tracing System---------------------

Pioneer_f71707

~海外版サービスマニュアルの回路説明より抜粋~
 ・WIDEフィルターの特徴:歪は少ないが選択度が低下する。
 ・NARROWフィルタの特徴:歪は多いが選択度は高い。
 ・一般的なチューナーはWIDEとNARROWのフィルターを状況に応じて切り換える。
 ・そこでF-91では ARTSを採用し、フィルターはNARROWのみとした。
 ・ARTS = Active Real Time Tracing System
 ・ARTS とは NARROWフィルターの中心周波数を受信信号に追随させる方式である。
 ・これによって歪と選択度の両方を性能を向上させた。

F91_block_diagram
F717_align3

 ・ブロック図に示された信号の流れを実機写真に書き込んでみました。
 ・黄色矢印は音声系の流れ、青色矢印は制御系の流れを示します。
 ・IF信号を13.45MHzに変換してNARROWフィルターを通し、再度10.7MHzに戻す。
 ・フロントパネルに小さく印字してあるだけなので気に留める人は少ないでしょうね。

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■調整記録------------------------------------------------------------

 ・SMにはRF調整、信号系の同調点調整、MUTING調整、REC LEVEL調整しか載っていません。
 ・そこでブロック図、回路図、回路解説を頭に入れて調整手順を組み立ててみました。
 ・正しい方法かどうか分かりませんが記録として残します。

●FM部調整
【VT電圧調整】
 ・TP33電圧計セット
 ・90MHz → 実測値  L3調整 → 23.5V
 ・76MHz → 実測値  7.4V ※確認のみ
【RF調整】
 ・TP22(=IC108 PA5008-10ピン)電圧計セット ※Sメーター電圧確認
 ・90MHz 60dB受信 → TC1,TC2,TC3調整 → 電圧最大へ
 ・76MHz 60dB受信 → L1,T1,L2調整 → 電圧最大へ
【制御用検波調整】
 ・TP24~TP26 電圧計セット ※R181両端=Tメーター出力
 ・83MHz 60dB受信 → T103a(右)調整 → ±0V
 ・TP25(=IC108 PA5008-12ピン)WaveSpectra接続 ※クアドラチュア検波出力
 ・83MHz 60dB受信 → VR101調整 → MONO歪最小
 ・83MHz 60dB受信 → T101,102調整 → MONO歪最小
 ・83MHz 60dB受信 → T103b(左)調整 → MONO歪最小
 ・83MHz 60dB受信 → VR106調整 → MONO歪最小
【IF VCO調整】
 ・TP29 周波数カウンタ接続
 ・83MHz 60dB受信 → L118 調整 → 13.45MHz
 ・TP27 周波数カウンタ接続
 ・83MHz 60dB受信 → 10.7MHz ※確認のみ
【IF歪調整】
 ・TP15(=IC201 PA5008-12ピン)WaveSpectra接続
 ・83MHz 60dB受信 → VR107調整 → MONO歪最小
 ・83MHz 60dB受信 → T105,T106,T107,T108,T109,T104調整 → MONO歪最小
【検波歪調整】
 ・83MHz 60dB受信 → シールドケース内T201調整 → 高調波歪最小
 ・83MHz 60dB受信 → VR201,VR202調整 → 高調波歪最小
【38kHz調整】
 ・TP19 周波数カウンタ接続
 ・83MHz 60dB(無変調)受信 → VR206調整 → 38kHz
【PILOT CANCEL調整】
 ・音声出力端子にWaveSpectra接続
 ・83MHz 60dBステレオ受信 → VR207調整 → 19kHz漏れ最小
【セパレーション調整】
 ・音声出力端子にWaveSpectra接続
 ・83MHz 60dBステレオ受信 → VR204,VR209調整 → L-R調整
 ・83MHz 60dBステレオ受信 → VR205,VR208調整 → R-L調整
【Sメーター調整】
 ・VR104(=IC108 PA5008 10ピン)→ Sメーター点灯レベル調整
 ・VR102 ※VR104との関係がよく分からない
【ミューティング調整】
 ・83MHz 18dB受信 → VR103調整 → ミューティング動作位置へ
【REC LEVEL調整】
 ・REC CAL オン → 出力レベル確認(実測339Hz)→ VR302調整 → 出力レベル-6dB
 ・実測339Hz

●AM部調整
【VT電圧調整】
 ・TP33 電圧計セット
 ・522kHz → L301調整 → 2V±0.3V
 ・1629kHz → TC301調整 → 19.5V±0.5V
【受信調整】
 ・TP35 電圧計セット
 ・VR301を中央位置にセット
 ・729kHz 受信 → T301調整  → 電圧最大へ
 ・1332kHz受信 → TC302調整 → 電圧最大へ
 ・603kHz 100dB受信 → VR301調整 →4.9V±0.1V ※注意:5.2V以上にしないこと

F717_align

■試聴----------------------------------------------------------------

 ・部品取りのつもりが思いがけず正常動作品に生まれ変わりました。
 ・代わりに本来修理対象だった1号機を部品取り機として保管することにします。
 ・今回は新しい発見があってとても勉強になりました。
 ・貴重な機会をいただいたことに感謝いたします。

Pioneer_f71709


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