・2015年11月初め、LUXMAN T-530の調整作業を承りました。
・実機を見るのは初めてなので興味津々です。
・以下、作業内容をご報告します。
■製品情報-----------------------------------------------------------
・オーディオ懐古録 LUXMAN T-530 ¥78,000
・オーディオの足跡 LUXMAN T-530 ¥78,000(1982年6月発売)
・Hifi Engine Luxman T-530 ※海外版サービスマニュアル
■動作確認------------------------------------------------------------
・操作ボタンの色や形状がこの時期のラックスっぽい印象です。
・フロントパネルはほぼ無傷ですが木製ボディにキズが多いのがちょっと残念。
・アナログチューナーと同様に、フロント両端に電球を配置した構造でした。
・この照明によってフロントパネルの文字が青く浮かび上がります。
・インジケーターはすべて赤色LED。Sメーターは赤色7連LED。
・白い周波数表示は十分に明るく文字痩せなし。
・FMの受信周波数帯は76.1MHz~89.9MHzです。
・AMは手持ちのループアンテナを接続して受信確認。
・FM/AMとも特に問題は無さそうです。
■C.A.T.システム / Computer Analized Tuning System--------------------
・受信状態に応じてコンピューターが4つの機能を自動切替し最適組合せを実現する機能。
・通常は C.A.T.ボタンは押さない状態(インジケータ点灯)で使用。
・C.A.T.ボタンを押した状態(インジケータ消灯)でC.A.T.システムオフ。
・C.A.T.システムオフのとき4つの機能は手動で個別選択できる。
【Antenna Attenuator】アンテナアッテネーター
・6連バリコン相当の6バラクター構成により強電界における妨害排除能力を高める機能
・スイッチオンによ4連フロントエンドパックに加えてアンテナ側2連が起動する。
・強い電波の近接局がある場合に有効
【IF Selector】IF帯域切替
・Wide(400kHz)とNarrow(300kHz)の2段切替機能
【C.S. Filter】アンチバーディーフィルター
・不要な高域成分をカットし隣接局からの妨害波によるビート障害を排除する機能
※おまけ「C.S.」の意味は?
・サービスマニュアルに「C.S.Filter(Anti-Birdie Filter)」と記載あります。
・LUXMANカタログに「Anti-Birdie Filter (Clean Sound Filter) 」と記載あり。
・つまり、C.S.Filter=アンチバーディーフィルター=Clean Sound Filter
【High Blend】ハイブレンド
・受信強度に応じてステレオセパレーションを調整する機能
■内部確認------------------------------------------------------------
・4連相当フロントエンドパック+アンテナ側に外付け2連=6連相当
・LA1235 FM IF SYSTEM クアドラチュア検波
・LA3390 PLL MPX DEMODULATOR
・LA1245 AM TUNER
・VR101:FM Signai LED
・VR102:FM Muting
・VR103:AM Signal LED
・VR104:VCO
・VR105:FM Stereo Separation
・VR301:Test Tone
・CT101:FM Tracking(High End)
・CT102:FM Tracking(High End)
・CT103:AM Tracking(1400kHz)
・CT104:AM Tracking(1400kHz)
・IFT :FM Stereo Distortion
・L101:FM Tracking(Low End)
・L102:FM Tracking(Low End)
・L103(Left):FM Distortion
・L103(Right):FM Center
・L104:AM Tracking(600kHz)
・L105:AM IF
・L106:AM IF
・L107:AM Tracking(600kHz)
・F106:FM Stereo Carrier Leak
・F107(Black):FM Stereo Carrier Leak
■調整記録------------------------------------------------------------
・海外版サービスマニュアルに日本語で書かれた調整手順が掲載されています。
●FM部
・C.A.T.オフ、Mutingオフ
【FM同調点調整】
・TP3~TP4 DC電圧計セット
・83MHz mono 1kHz 100%変調 60dB → L103(IC側)調整 → 電圧ゼロ
【FM同調点調整】
・音声出力にWaveSpectar接続
・83MHz mono 1kHz 100%変調 60dB → L103(逆側)調整 → 歪最小
【VCO調整】
・TP5 周波数カウンタ接続
・83MHz 無変調 60dB → VR104調整 → 19kHz±10Hz
【セパレーション調整】
・Mutingオン
・音声出力にWaveSpectar接続
・83MHz stereo 1kHz 100%変調 60dB → VR105調整 → 反対chへの漏れ信号最小
・フロントエンドユニット内IFT調整→ ステレオ歪最小
・上記作業を数回繰り返す
【パイロット信号キャンセル調整】
・Mutingオン
・音声出力にWaveSpectar接続
・83MHz stereo 1kHz 100%変調 60dB → F106,F107(黒)調整 → 漏れ信号最小
【ミューティング調整】
・Mutingオン
・83MHz mono 1kHz 20dB → VR102調整 → 音が出る位置に
【Sメーター調整】
・83MHz mono 1kHz 50dB → VR101調整 → SメーターLED全灯
【テストトーン調整】
・音声出力にWaveSpectar接続
・83MHz mono 1kHz 50dB → OUTPUTレベル記録
・test tone オン → VR301調整 → 上記レベル-6dB ※実測474kHz
【フロントエンド調整】
・C.A.T.オフ、Antenna att.オン
・LA1235 13ピンにDC電圧計セット →Sメーター電圧
・76.1MHz mono 1kHz 50dB → L101,L102,※L103,L104,L105調整 → Sメーター最大
・89.9MHz mono 1kHz 50dB → CT101,CT102,CT103,CT104,CT105調整 → Sメーター最大
・上記作業を数回繰り返す。
※L103,L104,L105の調整は難しいので触らない方が無難。
※C.A.T.オフ、Antenna att.オンにしないとアンテナ側2段が動作しない。
【C.A.T.システム動作確認】
・サービスマニュアルにC.A.T.システムの動作確認について解説がありました。
・SGは1台しかないので希望信号をNHK-FMとし SGで妨害信号を生成してミックス。
・パッシブ型の2分配器を逆接続して混合器代わりにしました。
・82.50MHz NHK-FM 約60dB前後を受信。
・82.65MHz SGから信号強度を変えながら妨害電波送信。
・この実験で一覧表にある「希望信号60dB」における動作がほぼ再現されました。
・動作確認表の「FULL CAT」の状態になるとインジケーターがフル点灯します。
・「受信不能」とは妨害電波の音が聞こえる状態になることです。
・コンピューター制御はシーケンス通りに動作しているようです。
●AM部
【VT電圧】
・TP1 DC電圧計セット
・受信周波数 603kHz → L107調整 → 2V
・受信周波数1404kHz → CT104調整 → 7V
【RF調整】
・603kHz 1kHz 30%変調 → L104調整 → Sメータ最大
・1404kHz1kHz 30%変調 → CT103調整 → Sメーター最大
【IF調整】
・1053kHz CBCラジオを聴きながら L105,L106調整 → 歪感最小
【Sメーター調整】
・1053kHz CBCラジオを聴きながら VR103調整 → SメーターLED
■試聴----------------------------------------------------------------
・FM受信性能や音質は並クラスかな?と思います。
・でも照明によって浮かび上がる青色文字が上品な感じです。
・インジケーターの赤色LED、特にSメーターの赤色7連LEDがやや目立ち過ぎかも。
・C.A.T.システムについて大変勉強になりました。