・2015年9月、KT-9900(2台目)の修理調整を承りました。
・FM放送が正常に受信できない状態とのこと。
・1号機の経験を踏まえて修理に挑戦してみました。
■製品情報------------------------------------------------------------
・オーディオ懐古録 TRIO KT-9900 ¥200,000
・オーディオの足跡 TRIO KT-9900 ¥200,000(1978年発売)
・Hifi Engine KENWOOD KT-917
・取扱説明書 KENWOODダウンロードサイトから入手可能
・1号機の記録 2015年10月4日記事
■動作確認------------------------------------------------------------
<ご指摘の症状>
・一応受信できて音声も出るが、感度が低く常時「ザー」という雑音が聞こえる。
・MUTING 40dBに設定すると無音になる。
・アンテナA/Bとも同じ症状
・固定/可変出力とも同じ症状。
・STEREO/MONOとも同じ症状。
<確認事項>
・アンテナAに同軸ケーブルを接続して電源オン。
・電源オンから音が出るまで約10秒。
・1号機(電源部の電解コンデンサ総交換済み)は約5秒でした。
・周波数窓の照明点灯。メーター照明点灯。
・オレンジ色のインジケーター点灯。緑色のIFバンド表示も点灯。
・僅かに周波数ズレあるものの地元FM局を受信。STEREOランプ点灯。
・受信から数秒後にDDLインジケータ点灯。
・照明やインジケータ類はすべて点灯。タマ切れなし。
・それぞれのメーターは正常に動作している。
・ただご指摘のように出てくる音が良くないです。
・常時「ザー」という雑音、音声は「モゴモゴ」とこもったような感じです。
・マルチパスH端子の音を聞いてみる雑音の無いキレイな音声が出ています。
・つまりパルスカウント検波回路までは正常ということ。
・不具合は検波回路より後段、MPX回路やオーディオ回路にありそう。
■原因調査------------------------------------------------------------
・マルチパスH端子の出力正常、つまりパルスカウント検波までは正常。
・MPX基板(X04-)上で不具合箇所を捜索。
・MPX基板1番端子 MPX基板入力端子 正常
・IC3(TC4066BP)入力 2,4,8,10ピン 正常
・IC3(TC4066BP)出力 1,3.9.11ピン 正常
・IC1(NJM4559DF)入力 5ピン 正常
・IC1(NJM4559DF)出力 7ピン 正常
・R73 左側 正常
・R73 右側 異常
・IC5(NJM4559DF)入力 6ピン 異常
・IC5(NJM4559DF)出力 7ピン 異常
・どうやら故障部品は IC5(NJM4559DF)のようです。
■修理記録 IC5(NJM4559DF)オペアンプ交換-----------------------------
・1号機でも苦戦しましたが、MPX基板を外す作業は相当面倒です。
・MPX基板(X04-)は外さず、斜めに傾けて隙間からはんだごてをそっと挿入。
・慎重にIC5を外してICソケット設置。
・手持ち在庫 NJM4559D をはめ込んで電源オン。
・「ザー」という雑音が消えて本来のFM音声が出てきました。
・第一関門クリア!
・ハンダ面には IC5-2ピン~5ピン間に1kΩ抵抗が直付けされていました。
・この抵抗を外した状態では音声出力レベルが-10dBほど低くなります。
・ハンダ面への直付け作業は困難なので、止むを得ず上面から取り付けました。
■修理記録 IC9 C-MOS IC交換-------------------------------------------
・オペアンプを交換して常時聴こえる不快な雑音は消えましたが、、
・次の不具合はLchだけに「ザザッー、ザザッー」と不定期に混じる雑音でした。
・Rchの音声には雑音は混じりません。
・MPX基板(X04-)の出口からさかのぼってノイズ源を捜索。
・IC9 (TC4066BP) 入力 2ピン→正常、3ピン→正常
・IC9 (TC4066BP) 出力 1ピン→正常、4ピン→異常
・ノイズ源は IC9 (TC4066BP) か?
・慎重にIC9を外してICソケット設置。新品の TC4066BPをセット。
・ところが問題の雑音が解消しません。
・IC9の入力はコンポジット信号なので雑音源はスイッチング信号の方か?
■修理記録 トランジスタ交換-------------------------------------------
・IC9 (TC4066BP) にスイッチング信号を供給する回路を点検。
・雑音の発生間隔が長く、かつ不定期なので粘り強く雑音発生を待ちました。
・雑音を出していたのは Q7 (2SA733) でした。
・周囲のトランジスタ4個セットまとめて交換しました。
・Q7,Q8 :2SA733 → 2SA1015
・Q10,Q11:2SC945 → 2SC1815
・これでLchだけの雑音は消えたと思います。
■修理記録 電源部電解コンデンサ交換-----------------------------------
・電源基板で気になっていた頭が飛び出したコンデンサを交換。
・C22 100uF/16V → 100uF/63V
・電源オンから音が出るまでの時間が約2秒短縮されました。
■修理記録 さらなる不具合--------------------------------------------
・修理完了、と思ってFM放送をBGMに流しながら動作確認していました。
・ところが次なる不具合発覚。
・NHK-FMでモノラルのニュース放送に切り替わるとRchの音量が小さくなる。
・Lchは正常な音量が出る。
・ステレオ全国放送に復帰すると左右から正常に音がでる。
・ステレオ放送中にKT-9900側でMONOに切り換えると左右から正常に聴こえる。
・MUTINGオフの状態で離調すると「ザー」という局間ノイズが聴こえますが、
・この局間ノイズがやはりRch側が極端に小さいです。
・ステレオ放送受信時は正常なのに、、この不具合原因が分かりません。
■調整記録------------------------------------------------------------
・1号機の調整記録に倣って各部調整しました。
■FM多重放送によるノイズ問題------------------------------------------
・【SCA調整】の項目
・KT-9900 L6 調整 → D4(X04-)カソード側DC電圧最大へ
・この2号機は L6を回してもD4カソード電圧がほとんど変化しません。※30mV前後
・L6とD4の中間にあるIC2 (NJM4559DB)の劣化を疑って交換しましたが変化なし。
・L-01T 2号機の L11 を L6に移植してみましたがこれも変化なし。
・KT-9900 1号機では SCAスイッチが頻繁に ON/OFF を繰り返す症状がありました。
・KT-9900 2号機では 電圧が低すぎてSCAスイッチが作動しません。
・L-01TとKT-9900のSCAスイッチ回路を比較してみました。
・相違点は L-01T回路図に記された「SCA TUNED」回路でフィルターが一段少ないこと。
・たった2台の検証事例ですが、今のところ KT-9900ではノイズ問題を回避できません。
【L-01T】
・検波信号 → L10 → L11 → IC9(NJM4559)(1/2) → D36 → IC9(NJM4559)(2/2)
・部品番号 L10 = 00050-05-081
・部品番号 L11 = 0050-05-0081
・SCA FILTER
・部品番号 L12,L13,L14,L15 = 0048-05-081
【KT-9900】
・検波信号 → → L6 → IC2(NJM4559)(1/2) → D4 → IC(NJM4559)(2/2)
・部品番号 L9 = 0050-05-871
・SCA FILTER
・部品番号 L1,L2,L3,L4 = 0048-05-871
■試聴----------------------------------------------------------------
・残念ながらNHK-FMのVICSノイズは回避できませんでした。
・このノイズは、電波状況が悪くて「サー」という雑音が聴こえる状況と似ています。
・曲間の無音時やクラシック曲のピアニシモ部分で特に気になります。
・大音量のロックやジャズではあまり気にならないです。
・「見えるラジオ」が終了した民放FM局では、そもそもノイズ問題はありません。
・KT-9900ではこのノイズ問題と付き合っていかなければならないようです。